貴州省黔東南(けんとうなん)州の州都・凱里市にあるミャオ族トン族風情園では、近年「繍里淘(しゅうりとう)」と呼ばれる非物質文化遺産(非遺)市場が注目を集めています。市場には6000点を超える非遺商品が並び、銀飾、刺繍、臈纈(ろうけつ)染め、木工などの作品が軒を連ね、連日、多くの観光客が少数民族の文化の魅力に触れています。

「繍里淘非遺集市」の入り口
黔東南地域は、ミャオ族やトン族など多くの少数民族が暮らす地であり、刺繍、臈纈染め、銀細工、木工などの非遺文化が今も息づいています。かつてはそれらの工芸品が地域ごとに分散しており、統一的な展示・販売の場が存在しませんでした。そこで2023年、凱里市は分散していた商店をミャオ族トン族風情園に集約し、「繍里淘非遺集市」として再整備。文化と観光、産業を融合させた新しい拠点として生まれ変わりました。

自作の手作り作品を販売する地元住民たちの様子
この市場は、従来の「古い刺繍市場」を前身としています。もともと老街では、村人たちが週に数日だけ刺繍や手工芸品を持ち寄り販売していましたが、施設の老朽化を機に、風情園へと移転。現在の繍里淘では、固定店舗と露店が共存する新しい形へと進化し、週3~6日の営業日を設けることで、より多くの人が日常的に訪れられる空間となりました。

古い刺繍布が地面に並べられ、買い手を待つ様子

古い刺繍布と銀飾りを組み合わせて作られたアクセサリー
繍里淘では、商品をただ販売するだけでなく、製作過程を見学したり、体験できるスペースも整備され、訪れた人々が職人の手仕事に触れながら文化を学ぶ場となっています。こうした「見て・触れて・買える」体験型の空間は、非遺文化の再生と普及に新たな活力を与えています。
開設以来、繍里淘には延べ10万人を超える国内外の観光客が訪れ、取引総額は1000万元を突破しました。地元の手工芸人たちにとっても安定した収入源となり、伝統技術の継承と地域経済の活性化を同時に支えています。繍里淘は、単なる市場ではなく、非遺文化が現代都市の生活の中に息づく象徴です。古くから続く手仕事が新しい商業空間に溶け込み、人々の日常に再び彩りを添える――その光景は、地域が自らの文化を誇りとし、未来へとつなぐ力強い姿を映し出しています。
参考
張雨桐. “非遗”传播新景観:市集里的苗绣——以贵州凯里市绣里淘“
探访贵州凯里绣里淘非遗集市[EB/OL]. 中国新聞綱, (2024-06-08)[2025-10-18].
https://baijiahao.baidu.com/s?id=1801291496651281655&wfr=spider&for=pc.
贵州凯里“绣里淘”:游客感受非遗之美[EB/OL]. 中国人民綱, (2025-06-12)[2025-10-18].
http://gz.people.com.cn/n2/2025/0612/c406492-41257809.html.
(胡藝航)


