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#291

万博へ暖簾を見に行く
― 大阪府大阪市

開催中の2025大阪・関西万博で、ある暖簾(のれん)を見てきました。
博覧会の売店は百貨店が担うことが多く、今回の万博でも近鉄百貨店と大丸松坂屋百貨店がオフィシャルストアを運営しています(百貨店以外では、JR西日本グループと丸善ジュンク堂書店も運営)。大丸松坂屋百貨店のオフィシャルストアは東ゲート近くにあり、入口には大暖簾が掲げられています。オフィシャルストアの中で唯一暖簾を出したことは、老舗百貨店の運営だと一目でわかる良いデザインだと思いました。
そしてこの暖簾が面白いのは、左側に「丸に大」、右側に「いとうまる」の紋章が並ぶ大丸と松坂屋の“ダブルネーム”だということです。

①万博オフィシャルストア(大丸松坂屋)の大暖簾(筆者撮影)

万博オフィシャルストア(大丸松坂屋)の暖簾

万博オフィシャルストア(大丸松坂屋)の暖簾

大丸と松坂屋は元々別の企業でした。松坂屋は1611年に名古屋で創業し、1768年に江戸へ進出しました。一方大丸は1717年京都に創業の後、約30年間の短期間で大阪、名古屋、江戸へと出店を重ねています。このように両者は江戸時代以来のライバルでしたから、1つの暖簾に2つの紋章が並ぶとは夢にも思わなかったはずです。
年月は流れ、2010年に両社は合併して大丸松坂屋百貨店が誕生しました。しかし百貨店は合併しても、長年地域に馴染んだ店舗の屋号を変えない傾向があります。「大丸」と「松坂屋」の各店舗も屋号はそのままで、「大丸松坂屋」には改名されませんでした。ですから当然ダブルネームの暖簾が店先に掛かることもなかったのです。

現在の大丸京都店の暖簾

現在の大丸京都店の暖簾

大袈裟ではありますが、どの時代にも存在しない暖簾はまるで並行世界の産物か、あるいはオーパーツのようです。万博オフィシャルストアの大暖簾の前に立って、すっかり魅せられてしまいました。これがまさに、ストアコンセプトである「元禄時代の大店/EXPO2025 Ver.」の体験なのでしょう。

参考
EXPO 2025 大阪・関西万博公式「大阪・関西万博公式ライセンス商品を販売する会場内オフィシャルストアの営業参加事業者が決定!!」、
https://www.expo2025.or.jp/news/news-20241206-03/(2025年7月5日閲覧)。

大丸松坂屋百貨店「沿革・歴史」、
https://www.daimaru-matsuzakaya.com/company/chronology.html(2025年7月5日閲覧)。

Think LOCAL「地域から飛び出し、世界へ 2025大阪・関西万博 会場内オフィシャルストアに込めた想いとは」、
https://think-local.dmdepart.jp/project/20250502osaka1/(2025年7月5日閲覧)。

(三木京志)