高知県の中央部に位置する、いの町。この町を流れる仁淀川は、高知市から車で20分ほどで着きます。水質ランキングで何度も第1位を誇り、河口の海と混ざり合う場所から上流までの水辺の利用率も日本一です。愛媛県との県境にほど近い上流では平成岩地帯が広がり、薄い緑色をした硬い石に、石鎚山系から透明度の高い水が流れ込み、空の青とも山の木々の緑とも違うとても美しい「仁淀ブルー」がひろがります。台風や大雨の多い夏から秋にかけては川底が洗われ、川の水はより一層透明度が増します。5月のゴールデンウィーク頃から夏場はキャンプやカヌー、釣りなどのアウトドアが盛んです。仁淀川では、季節や時間帯、風の向きによって、毎日違った色合いの自然を堪能できます。
少し涼しくなった秋風を感じることのできる9月の半ば、仁淀川の河原では、「仁淀川 神楽と鮎と酒に酔う」という大人のイベントが開かれます。広い空と雄大な川を目の前に、地元漁師さんが炭火で焼いてくれた天然の鮎と、仁淀川を仕込み水に使用してつくられる地酒、地元の食べ物を楽しむことが出来ます。お酒好きが多い高知では、食欲の秋にちなんでたくさんの食のイベントが盛んになりますが、飲んで食べるだけではない楽しみがあるのがこのイベント。伝統の鮎の火振り漁や、土佐神楽の演舞を見ることもできます。
高知県には、国の重要無形民俗文化財に指定されている9つの土佐の神楽があります。神楽とは、神霊の宿りとして神座を設け、その前で行われる歌舞音曲を指しています。土佐の神楽は高知県の四国山地に沿って点在しており、このイベントのクライマックスでは9つの神楽のうち1つが演舞し、月夜の河原にいるほろ酔いの観客を魅了します。今年の神楽である「名野川磐門神楽」は他の土佐神楽の中で唯一、いの町にある神社「いの大国さま」の「大国主命(おおくにぬしのみこと)」が登場する演目があり、この場所でしか感じることのできない魅力の詰まったイベントになっています。
(大賀美穂)