タイといえばトムヤンクン、ベトナムならフォーや生春巻き、ではカンボジアで有名な料理は? という質問をよく受けます。カンボジアらしく人気も高いものとなると、ノムバンチョックでしょうか。

アンコールワットのある古都・シェムリアップのノムバンチョック。近くで摘んだ木の新芽をトッピングしていただく
ノムバンチョックは朝食やおやつ、またはお祭りのときなどに食べられる、カンボジアでなじみ深い料理です。屋台や小さなお店、天秤棒で売りに来るものを食べたりします。屋台では家族のぶんをまとめてテイクアウトする人も多いです。

麺にスープをかけて、たくさんの野菜やハーブをトッピングしていただく
夕方になり暑さがやわらぐころ、プノンペンの路地に天秤棒をかついだノムバンチョック売りのおばちゃんが現れます。足元には大きな鍋と山盛りの野菜とハーブ、そして米麺。通りがかった人たちが次々と足を止め、プラスチックの椅子に腰かけて麺をすすっている様子は、都会であるプノンペンらしい光景といえるかもしれません。
お米を石臼でひいて作ったプルプルした麺にスープをかけて、数種類のハーブや野菜をトッピングして、スープをかけていただきます。スープにはいくつか種類があり、たとえば「ソムロー・クマエ」はカンボジアの汁という意味で、すりつぶした魚の身とクルーンというハーブのペーストから作られたやさしい味わい。赤いスープは「ソムロー・カリー」。鶏肉入りのココナツカレー仕立てでほのかに甘く、子どもにも人気です。

路上のノムバンチョック売り。赤いスープはソムロー・カリー。左のスープがソムロー・クマエ
刻んだバナナの花やマメ科植物の花、湖が近いエリアならホテイアオイの花やスイレンの茎など目にも楽しい素材が使われたり、近隣で獲れた魚やエビを使ってスープを作ったりと、シェムリアップやプノンペン、カンポットなど地域によって具材も味わいも少しずつ異なり、みな自分の故郷のノムバンチョックが一番おいしいと胸を張ります。
歴史も古く、カンボジアでは中国の麺の起源がカンボジアであるという説もあるくらいです。2019年にはユネスコの世界無形文化遺産に登録しようとする動きもありました。いつか日本でもおなじみのメニューになるかもしれません。

刻んだバナナの花をトッピングしていただく。バナナの花はスープやサラダにする身近な食材
参考
The Phnom Penh Post, “Ministries seeking heritage status for Num Banh Chok,” Retrieved April 29, 2025,
https://www.phnompenhpost.com/national/ministries-seeking-heritage-status-num-banh-chok.
MOVE TO CAMBODIA, “Khmer noodles: The story of num banh chok,” Retrieved April 29, 2025,
https://movetocambodia.com/food/khmer-noodles-the-story-of-num-banh-chok/.
(三浦まり子)