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アネモメトリ -風の手帖-

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#271

「集い、食し、祝う」ホリデー文化
― アメリカ合衆国全域

アメリカのホリデーシーズンは11月末のサンクスギビング(註1)を皮切りに、クリスマスから年末年始にかけて盛り上がり、大都会でも地方の田舎町でも見られるイルミネーションで人々の気分も上がります。
今回はそのホリデーシーズンのご馳走のお話です。
日本でも年末年始に旅行に行く人々が増えているように、ここでも長期休暇の使い方に変化が見られる一方で、集まって兎に角食べて語り合う人々も依然として多いように感じます。食品店には巨大な丸ごとの七面鳥が山のように積まれ、お祝いのメイン料理としてローストされるのを待っています。

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20世紀後半までのご馳走は今より少しだけフォーマルなものだったようで、30年代が初版の料理本『joy of cooking (ジョイ・オブ・クッキング)』1997年版には、「ホリデーディナー」との項目で、スープ、フィンガーフード、前菜、野菜の付け合わせやサラダ、メイン、デザートのフルコースが記載されていました。同じ本の2019年版を開くと、年間行事毎のメニューは若干簡素化されて、前菜、一皿目、メイン、付け合わせ、デザートとなり、最近は必須となりつつあるベジタリアンメニューも加わり時代性が反映されています。

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気になるデザートですが、サンクスギビングのケースでは、収穫時期でもあるパンプキン、アップル、ピーカンの3種のパイが定番化しており、昨今どこでも大人気です。上述の料理本の1997年版では、サンクスギビングのデザートメニューの例はフレッシュチェリーパイとあり、かつては必ずしもこの3種に限らなかったようだと想像されました。クリスマス用デザートは現在も様々で、パイやケーキなどお好みで、クリスマスプディング(註2)も未だ根強い支持があり、日本でホリデーイメージの強いフルーツケーキは何故か不人気であったりします。

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時代とともに少しずつメニューの中身に変化はありながら、テーブルを囲んで賑やかにお祝いをする文化は引き継がれてきました。これまでも、そしてこれからも、幸せと健康を祝してたらふく食べてお祝いするアメリカのホリデーは、家族や友人の絆を確かめ合う大切な時間なのかもしれません。
ハッピーサンクスギビング! メリークリスマス!

(註1)
感謝祭の祝日。開拓者が初めての収穫を得て神に感謝したことを記念したのが始まりで、11月第4木曜日がそれにあたる(『デジタル大辞泉』小学館、参照)。

(註2)
クリスマスに食べるプラムプディング。ブランデーをかけ火をつけて楽しむ(『新英和大辞典第六版』研究社、参照)。

写真撮影と提供
筆者友人Koi Ellis、Nancy Beattie(順不同)

参考
Irma S. Rombauer et al., Joy of Cooking, Fully Revised and Updated, New York, Scribner, 2019.

Irma S. Rombauer et al., Joy of Cooking, New York, PLUME, 1997.

(福寿美佐)