ニューヨーク市マンハッタン地区の観光名所の一つとして定着してきたハイラインに、2023年6月、「モイニハン・コネクター」という新しい区画が完成しました。
ハイラインは、細長いマンハッタン島の中央西寄りをハドソン川沿いに走る高架線跡に、2009年開通した全長3キロ余りのユニークな遊歩道です。せわしない地上から約9メートルの高架上を南北に自由に往来できるだけでなく、季節毎の植栽やアート作品が楽しめ、様々な腰掛けスペースも数多く設置されています。北の端には大型商業施設ハドソンヤード、南側にはチェルシーやミートパッキングと呼ばれるお洒落な地区が広がります。
今日は、このハイラインに新たに延びたコネクターをご一緒しましょう。ハイライン北寄りの大きく西にカーブする地点を起点に、反対の東側に90度折れる所から新区画は始まります。10番街を横切り30丁目に沿って延びる最初の橋は鉄橋のようで、両サイドにはハイラインお決まりのグリーンが豊富です。
東西に抜ける川からの風を感じながらしばらく進むと、木陰から左手前方に木組みが見えてきました。突き当りを再び90度左に折れると、アラスカ産イエローシーダーで造られた2本目の橋が架かっています。顔を近づけると清々しい香りが漂ってきました。設置から1年弱で目下木目は薄い黄白色ですが、月日と共に街並みに溶け込むカラーに変化していくことでしょう。
橋の終点を過ぎるとマンハッタン・ウエストと呼ばれる複合施設が広がり、右折をするとリノベーションされた鉄道駅が入る古い郵便局ビルが視界に入ります。
モイニハン・コネクター建設の主目的は、ハイラインやハドソンヤードとマンハッタン地区の長距離線鉄道ターミナル駅を結ぶことにありました。ターミナル駅の新駅舎は、原案を出した人物の名前に因みモイニハン駅と呼ばれています。そして、その駅と観光施設を結ぶ正にコネクターの役割を担うのがこの2本の橋なのです。ハイラインのルーツである高架線と鉄道が、橋のデザインの源であることは言うまでもないでしょう。
盛りだくさんな7~8分の道のりで、信号待ちの可能性は1回のみのストレスフリーな散歩道です。
参考
ジョシュア・デイヴィッド/ロバート・ハモンド『HIGH LINE アート、市民、ボランティアが立ち上がるニューヨーク流 都市再生の物語』和田美樹訳、アメリカン・ブック&シネマ、2013年。
La Farge, Annik. On the High Line: Exploring America’s Most Original Urban Park. New York: Thames & Hudson, 2014.
HIGH LINE, “Moynihan Connector,” Retrieved April 14, 2024,
https://www.thehighline.org/connections/.
Skidmore, Owings & Merrill, “Moynihan Train Hall,” Retrieved April 14, 2024,
https://www.som.com/projects/moynihan-train-hall/ .
(福寿美佐)