福岡アジア美術館(通称あじび)は、アジアの近現代美術を専門に収集、展示する世界唯一の美術館です。23ヵ国・地域を調査、収集の対象とし、収蔵品は約5,000点にのぼります。1999年、福岡市博多区に開館し、2024年3月6日に開館25周年を迎えます。
それを記念して、2023年9月14日から、「福岡アジア美術館ベストコレクション」と題した特別企画展が開催されています(会期は2024年4月9日まで)。これは、収蔵品の中から10名のアーティストの作品を24点選び、展示するものです。展覧会ではこの10名を、自国の先進的なアートシーンをけん引してきた「アジア美術のオールスター」と紹介しています。
美術館行きのエレベーターに乗ると、中国人アーティスト、ファン・リジュン(方力釣)の作品の一部である、不気味に笑う男の姿が目に飛び込んできます。美術館に到着しドアが開くと、そこにはまたファン・リジュンが。展示室に入ると、やはり彼の1992年の作品《シリーズ2 No.3》が観覧者を出迎えます。歪んだ顔や、不敵な笑みを浮かべるスキンヘッドの男が青い空を背景に、反復して描かれています。この男は、作者がモデルだと言われています。この作品が制作された時代は、1989年6月の「天安門事件」の影響が残っている頃でした。誰の頭上にも平等に広がる青空。作品の中の青空には、雲が広がり始めています。「私たちの頭上にも、いつか暗雲が立ち込めるかもしれない。」そんな恐怖を感じさせる作品です。その他、ツァイ・グオチアン(蔡國強)の《天地悠々:外星人のためのプロジェクトNo.11》や、ナリニ・マラニの《略奪された岸辺》などの作品が展示されています。
アジア美術館は、街の中の複合ビルの7、8階にあります。金曜日、土曜日は20時まで観覧でき、仕事帰りでも気軽に訪れることができます。巡回展などの人気展には多くの観覧者が訪れますが、コレクション展に対する観覧者数は多いとはいえないようです。集客という課題はありますが、これからもユニークな美術館であり続けることを期待しています。
参考
福岡アジア美術館「福岡アジア美術館ベストコレクション」、
https://faam.city.fukuoka.lg.jp/exhibition/18828/(2024年1月19日閲覧)。
広報誌『あじびニュース』福岡アジア美術館、 vol.92、2023年。
(今長まゆみ)