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アネモメトリ -風の手帖-

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#239

水中に沈む長城―黄花城水長城
― 中華人民共和国 北京市

「長城に至らずんば好漢にあらず」という中国のことわざがあります。「初志を貫かないものはりっぱな人間ではない」という例えだそうです。万里の長城は北京の観光名所ですが、ひとことで「万里の長城」と言っても最も有名な八達嶺(はったつれい)長城をはじめ、慕田峪(ぼでんよく)長城、司馬台長城、金山嶺(きんざんれい)長城などといった複数の観光スポットが点在しています。山頂に沿って都を守るための防御壁として、秦の始皇帝の時代から建造が始まりました。現在に至るまで風雨にさらされ、崩壊し残骸だけが残っているところも多くあります。山脈に沿って連なるように建てられた壮大な建造物を目にすると、先人の残した偉大な功績に少々恐ろしさを感じるほどです。

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懐柔区には「黄花(こうか)城水長城」という少しユニークなスポットがあります。この敷地内には湖があり城壁の一部が湖に沈んでいて、まるで長城が水中から出没しているかのような幻想的な景色が見所です。もともと山の麓にあった湖を利用したダムの建設によって、長城の一部が水没しこのような現象が起きたのです。水没した城壁の部分を繋ぐようにガラス製の橋を渡し、水中の長城を見られるようにしています。

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北京の有名な長城はひたすら険しい階段を上ったり下ったりし、山頂から眺める景色を楽しむだけです。しかし、水長城では山と湖(水)を同時に眺めることだけではなく、湖で釣りや遊覧船を楽しんだり、平均樹齢500年と言われる明の時代の栗林やキャンプ場もあります。このように、自然に触れ合いながら長時間滞在できるため、企業の研修や子どもたちのオリエンテーションなどにも使われています。
他の長城に比べると観光客はそれほど多くないため、周囲には大手企業の店舗などの進出はみられず地元の人々が開いた旅館や商店などしかありません。そのおかげで地域の生活が垣間見られ、アットホームな雰囲気を楽しめます。自然を身近に感じ地域の人々との交流もできる地域密着体験型の長城として、他にはない楽しみ方ができるのが黄花水長城ならではの魅力といえるでしょう。

(厳 有佐)