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アネモメトリ -風の手帖-

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#208

ごみステーションがアートになった町
― 岐阜県多治見市

岐阜県多治見市は1000年の歴史を持つ美濃焼の陶都です。
和食器に洋食器、それに酒器まで、多くのうつわがこの町で作られています。
さらに多治見は、もう一つの顔を持っています。町を彩り、部屋を飾るタイルの町でもあります。全国のタイルの80%は市内の笠原町という地域で作られています。
今回は、タイルを使って町を彩るコミュニティ活動をしている女性グループを紹介しようと思います。

メンバーの皆さんの壁画制作中の風景 画像提供:モザイクプリンセス代表・武藤瞳都さん

メンバーの皆さんの壁画制作中の風景
画像提供:モザイクプリンセス代表・武藤瞳都さん

その活動は2016年、この町に住む女性たちの「自分たちの町をタイルできれいに飾りたい」という思いから「モザイクプリンセス」と名付けられました。そして、今ではこの町のランドマークとなった「多治見市モザイクタイルミュージアム」の完成に合わせて、ミュージアムの通り沿いのごみ置き場をタイルで彩ることから始まりました。今では、公園のベンチなど公共施設へ活動が広がり、町のあちこちがモザイクタイルで飾られています。
このチームを立ち上げたメンバーの女性たちは、タイルのプロではありませんが、それぞれ自分の得意技を持ち寄って活動の輪が広がり、今では、27ヵ所の施設でモザイク作品を見ることができます。

テーマ「アラビア紋」  画像提供:モザイクプリンセス代表・武藤瞳都さん

テーマ「アラビア紋」 
画像提供:モザイクプリンセス代表・武藤瞳都さん

テーマ「かぐや姫」 画像提供:モザイクプリンセス代表・武藤 瞳都さん

テーマ「かぐや姫」
画像提供:モザイクプリンセス代表・武藤瞳都さん

この活動のリーダー、武藤さんはこう言います。
モザイクタイルの一つ一つは小さいのですが、大きな絵として組み合わさった時に初めてタイルの持つ本当の魅力が分かるのです。それがとても大事なことなんだと。
スタートして8年、女性16人の小さなグループで始まったこの活動は、地域の人たちの応援や、さらに行政も後押しするまでに広がりました。
集落のごみ置き場をみんなが気持ちよく使える「ごみステーション」にしたいと町の路地裏で始まったこの活動は、さらに人の輪と舞台の広がりをみせています。
この活動のきっかけの一つとなった「多治見モザイクタイルミュージアム」はユニークな建築デザインで知られる建築家、藤森照信氏の設計によるもので、セピア色になった昭和を思い出させる生活備品から現代アートまで様々なモザイクタイルが展示され、多くの人を集めています。
穏やかな秋の一日、美濃焼とはちょっと違うタイルの町を歩いてみませんか?

モザイクミュージアムの夕景。山のように見える建物は、タイルの原料となる陶土の採土場が表現されている。

モザイクミュージアムの夕景。山のように見える建物は、タイルの原料となる陶土の採土場が表現されている

参考
多治見市モザイクタイルミュージアム
https://www.mosaictile-museum.jp/

(若尾憲治 )