7)ぶれない軸を持ち、「本当に必要なもの」を考える
そののち、1616 / arita japanは思わぬところでも認められることになった。平成28年度の中学2・3年生の美術の教科書に掲載されることが決まったのである。カテゴリーは「つながるデザイン」。たとえ地元で「あれは有田焼じゃない!」と叩かれたとしても、百田さんの言うとおり、「日本の教科書に載ってるんだから認めざるを得ないし、それが時代の流れ」だ。百田さんと柳原さんは一緒にブランド開発をすることで、有田焼の歴史に新たな一歩をしるしたのだった。
柳原さんは、ひとつひとつのプロジェクトを重ねながら、「本当に必要とされる」ものや場をつくってきた。ものは器の場合もあれば、家具のことある。インテリアの提案も、建物のリノベーションもする。さらには世界に向けて発信もする。自身のぶれない軸を持ちながら、求められることに応じて自在に、しなやかにかたちを変える。これ、とカテゴライズできないのが柳原さんの仕事のありかただと思う。
1616 / arita japanをきっかけに、柳原さんは現在、意義深いプロジェクトを手がけている。有田焼の400年を記念する佐賀県の一大記念事業のひとつで、県やオランダが関わるスケールの大きな取り組みだ。名づけて「2016 / project」。1616 / arita japanを手がけたときは思いもよらなかった展開である。
2016年に向けて、プロジェクトは現在進行形で、結果がどうなるかはまだわからない。けれど、最初から世界を見るような、柳原さんならではの視点から始まった有田焼の取り組みは、これまでの日本の伝統産業にはなかった画期的な試みだと思うし、じっさい現場では大きな「好循環」が始まっていて、関わるそれぞれが手応えを感じている。
後編では「好循環」をキーワードに、取り組みのプロセスを紹介していきたい。