1)オカンが絵を描き、息子がデザインする
2015年5月下旬、ラフォーレ原宿1階の「WALL harajuku」でRYOTA MURAKAMIのポップアップショップが期間限定でオープンした。正面玄関入ってすぐの、一番目につく場所で、あざやかな水色やピンクが目に飛び込んでくる。テーマは「梅雨」。雨の季節を前にして、雨粒や金魚の大胆なワッペンがあったり、毛糸で編んださくらんぼがTシャツなどの肩口についていたりと、遊び心全開の、目に楽しいコレクションだ。
そのスペースのなかで、村上千明さんが真剣な表情で絵筆を動かしている。この日、兵庫県加古川市の自宅から到着したばかりだった。「観に来ただけやったのに。いや、いきなりクロールの絵描いて、ていうから」とつぶやきながら、すごいスピードで白地のTシャツにクロールする男子を描いていく。千明さんが絵を描くようすを、息子の亮太さんが笑みを浮かべて隣で見ている。亮太さんが言う。
——絵を描いてもらうときって、こんな感じです。特に何も言わなくて、自由に描いてもらうというか。コンセプトは伝えますけどね。

ラフォーレ原宿1階「WALL harajuku」のポップアップショップ。千明さんはパフォーマンスのように絵を描いた