木工デザイナーの三谷龍二さんを特集する後編は、三谷さんの場づくりと、「生活工芸」と名づけた工芸の流れについて、取りあげていきたい。
三谷さんはもの静かな紳士だが、実はとても熱いひとだと思う。もちろん、暑苦しさなどはみじんも感じさせないけれど、自身の実感から、こうしよう、と思ったことは、いつのまにか、ひょうひょうと始めてしまう。考えにぶれがないから、やりたいことの筋も通っていて、説得力がある。三谷さんの思いを受けとめると、まわりはたいてい一生懸命動こうとして、好循環が生まれていくのだ。そんなふうにして、地元・松本の「クラフトフェアまつもと」から派生した「工芸の五月」、ついで「六九クラフトストリート」が生まれ、さらには四国の高松でも「瀬戸内生活工芸祭」を立ち上げることになる。
この「生活工芸」とは、いったい何か。ひとと、ものと、生活のかかわりについて、今の時代の流れにこのような名前をつけたわけだが、大きな潮流が生まれたきっかけは何だったのか。
「生活工芸」についての問いを投げかけつつ、前編と同じく、インタビューを中心に、三谷さんの著書や年譜の言葉も取りあげながら、2000年代から現在までを取りあげていきたい。
風信帖