アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#71
2019.04

コミュニティの、その先へ

1. 神奈川・鎌倉の民間企業とコミュニティ
2)「カマコン」というフォーマット
——面白法人カヤック(2)

まちの社員食堂を立ち上げたカヤックは、1998年、柳澤大輔さんが学生時代の友人2人とともに、東京で資本金3万3,000円から始めたウェブ・コンテンツ制作会社だ。
2002年には、創業メンバーが学生時代から好きだった鎌倉の由比ヶ浜に本社を移し、ゲームアプリ、キャンペーンアプリなどの「日本的面白コンテンツづくり」をテーマにした事業を中心に展開し、拡大。2005年に株式会社化し、2014年には鎌倉で唯一の上場企業となった。

個性的なIT企業として純粋に成長を目指す一方、柳澤さんらは、鎌倉に本社を置く企業として地域に貢献できる活動もしていこうと、2013年、鎌倉のベンチャー企業の経営者たちとともに「カマコン」と呼ばれる有志の地域団体を立ち上げる。

カマコンの主な活動は、「鎌倉を面白くするためのプロジェクト」を提案し合う、月1回の定例会だ。

特に入会資格を設けているわけではないが、参加は事前申し込み制の会員制にし、過去に参加したことがある会員と新しい会員が7:3程度になるように調整している。柳澤さんによれば、そのくらいの比率だと「文化が生まれやすくなる」という。

定例会では、まず会員メンバー4~5人が自作のプロジェクトをそれぞれ持ち込んでプレゼンテーションを行い、参加者は面白いと思ったプロジェクトを選ぶ。
その上で、参加者は自分が選んだプロジェクトがどうすれば実現するか、アイデアを出し合う。
その際には、カヤックの会議でも採用している「ブレスト(ブレーンストーミング)」と呼ばれる手法がとられる。1938年、アメリカのA.F.オズボーンが開発した会議方式で、「批判禁止」「質より量」「自由奔放」「アイデアの結合・便乗」の4原則を提唱するものだ。
その後、実際にそのプロジェクトを実行してみたいメンバーが参加表明をし、アクションを起こすという流れだ。

定例会の参加メンバーは、初回は7人だったが、現在では150人を超え、過去には鎌倉市長や鎌倉市役所の職員、一般のおじいさんやおばあさん、さらには中学生が参加したこともある。

このカマコンから出たプロジェクトから、地元の寺でミツバチを飼育し採取した蜂蜜を商品化するプロジェクト、市議会選挙に投票に行くと地元の飲食店で「選挙割」という割引が受けられたり、人力車に乗って帰れるキャンペーンなどが実現。
前述のまちの○○シリーズの多くも、このカマコンでプレゼンされ、実現したものだ。
これまでに250以上のプロジェクトがプレゼンされ、その3割ほどが継続中だという。

カマコンという試みが思いのほか機能し、充実した顔で帰っていく参加者のようすを見て、柳澤さんは、「このまちをつくっているのは自分だ、と思えるひとがもっと増えれば、いい社会になるのではないか」と考えるようになる。
思えばそれは、カヤックの経営理念である「つくるひとを増やす」にもつながるものだった。

カマコンには、さまざまな地域の行政や民間団体から視察が訪れ、現在は福岡県の「フクコン」、東京都世田谷区の「セタコン」など、地域自身によるまちづくりのロール・モデルとして、全国20ヶ所以上に広がりを見せている。

起業してから20年がたったカヤックは、IT業界ではすでに老舗の部類に入るらしい。
今では新たなコミュニティ・モデルを生み出す存在としても一挙手一投足が注目される存在だ。 

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2018年で20周年を迎えたカヤックの社員は現在約300人。「まち全体が、ぼくらのオフィス」というコンセプトのもと、鎌倉市内に拠点が点在している。写真は「研究開発棟」と「ぼくらの会議棟」。通用路の地面には15周年の時に生み出された「仲間を助ける勇気をもて。仲間に助けてもらう勇気をもて。」というキャッチフレーズが。オフィス・ビルの路地奥にある愛らしい古民家もオフィスの一部だ

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