ここからは、この8月27日に見たその他の作品を「ダイジェスト」で。

札幌市資料館へ。札幌国際芸術祭の「拠点」的な場所。ゲストディレクターの大友良英には、「拠点」よりも各地点を自由に飛び回るカラスのような存在が、よく似合う

資料館では「北海道の三至宝」の1つとして、木彫り熊の展示が充実していた。お土産物として有名な木彫り熊の歴史は意外と浅く、大正時代にスイスの民芸品を元に、農民の冬の副業として始まったそうだ

小さい熊たち

同じく「北海道の三至宝」、三松正夫の昭和新山の火山画。フィルムなどの希少な戦時中だから絵で描いたというだけでなく、これが「日本画」というスタイルをとっていることにも圧倒される

もう1つの「北海道の三至宝」には間に合わず

札幌コンサートホールKitaraにて。小学生から18歳くらいまでがメンバーのさっぽろコレクティブオーケストラ。大友が最初は「指揮者」を演じるが、時にその姿は中心から消える

こんな具合に。それが面白い

さっぽろコレクティブオーケストラのメンバーは流動的。いたり、いなかったり。中心がない。あるいは、中心があってもすぐにそれが移動する。大友に代わって公演の後半では「指揮者」は子供達が次々と担う。それが面白い

北専プラザ佐野ビルにて、端聡の水滴とその蒸発が同時に存在する作品に、最も近づくと見える光景

梅田哲也「わからないものたち」の舞台は、金市舘ビルのすでに使用されていない広大なワンフロア。もともとそこにあったもの、そこになかったものなど、様々なものを集め、仕掛けを施す。ホースが水を撒き散らしながら暴れたり、水漏れらしき音が続いたり。ドアの隙間からまばゆい光が漏れたり。漏れまくりの「わからないものたち」が満たす空間が作る、何もない「時間」
http://siaf.jp
取材・文:福永 信(ふくなが・しん)
1972年生まれ。小説家。『アクロバット前夜』(2001/新装版『アクロバット前夜90°』2009)、『あっぷあっぷ』(2004/村瀬恭子との共著)『コップとコッペパンとペン』(2007)、『星座から見た地球』(2010)、『一一一一一』(2011)、『こんにちは美術』(2012/編著)、『三姉妹とその友達』(2013)、『星座と文学』(2014)、『本とその周辺をめぐる、6か月とちょっとの旅』(2016/
1980年生まれ。写真家。『スカイフィッシュ』(2010)、『津波、写真、それから』(2014)、『石をつむ』(2015)、『Birds on the Heads / Bodies in the Dark』(2016)。2010年、AKAAKAにて個展「スカイフィッシュ」を開催。2002年、「キヤノン写真新世紀」優秀賞を写真ユニットSABAにて受賞。2008年、「littlemoreBCCKS第1回写真集公募展」リトルモア賞受賞。