11)まちとひとを、誠実に結ぶ未来
「固定せず、癒着せず、ゆるやかで自由に」。
前野さんたちがB!B!Sを続けるうえで心がけてきたことだ。じっさいのところ、それを続けるのはとても高度だと思う。何かを続けていくうえでは、ある程度かたちがあったほうが楽だし、自由であるゆえに考えなければならないことは山積みにされていく。必然的に、一歩進んで二歩下がるような状況に置かれてしまうこともある。けれど、それはほんとうに実のあること、やる意味のあることを手がけていくために、大切な過程なのではないだろうか。
B!B!Sは現在、非日常的なイベントを行うことより、原点に立ち返り、日常のなかで、ひとりひとりの思いや考えを知り、それをていねいにすくいとることを試みている。まちとひとを結び、ひとの心をひらいていく手だてとして、本はもっとも身近で、他に代わりのない存在なのだから。
石巻の勝さんや仙台の桃生さんも、その視点から活動を続けているように見えた。「まちの本棚」は、しなやかに変化しながら、本を循環させるなかでひととまちを誠実につないでいこうとしているし、仙台で桃生さんが手がけるいくつかプロジェクトでも、市民ひとりひとりがフラットに、臆することなく、発信と受信を往還できることを目指している。
本だから、できること。多くのひとを巻き込んで、大きなエネルギーが動かすこともそのひとつだったけれど、もっと小さな単位でも、また新たに可能性がひらかれていくのだろう。
後編では、「伝えて残す」ための多様な試みを紹介しながら、アーカイヴすることについて考えゆく。
火星の庭
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Book! ! Book! Sendai
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石巻 まちの本棚
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ISHINOMAKI2.0
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Granny Rideto
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THE6
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冒険図書館プロジェクト
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つれづれ団
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編集者、ライター。京都造形芸術大学教員。近刊に『標本の本-京都大学総合博物館の収蔵室から』(青幻舎)や限定部数のアートブック『book ladder』。主な著書に『京都でみつける骨董小もの』(河出書房新社)『京都の市で遊ぶ』『いつもふたりで』(ともに平凡社)など、共著書に『住み直す』(文藝春秋)『京都を包む紙』(アノニマ・スタジオ)など。
写真家。1994年、第3回写真新世紀優秀賞。国内外での写真展や写真集を通じて作品を発表。2013年東京都写真美術館でのグループ展「路上から世界を変えていく」に参加。2014にはMEM での個展「sounds and things」、PARIS PHOTO 2014 への出展など精力的に活動を行っている。主な写真集に『サルサ・ガムテープ』(リトルモア)、『encounter』(マッチアンドカンパニー)、『サナヨラ』(愛育社)、『すべては初めて起こる』(マッチアンドカンパニー)など。