3)かたちから入らず、多様な手法で
そして、プロジェクトはさまざまな活動を経て、京都・無鄰菴での展覧会へとつながった。永井さんは展示という方法をこう位置づける。
「展示というと、作品をまじまじと鑑賞する場というようなイメージがあるかもしれませんが、空間で伝えるというか、立体的に情報を伝えるための方法の一つだと考えています。
本が平面で情報を伝える方法だとしたら、展示は実物を見せることができたり、いくつかの要素を一緒に同じ場に展開することできたり、いろいろな人がその場に集まって意見を交わすことができる、そういうことが展示の目的かなと思います」
展示とともに制作したのが、最新の出版物であるマップだ。『Water Calling——京都をめぐる水の地図』(Materia Prima、2025年)は、無鄰菴で展示されたダエロンさんの曼荼羅のようなドローイングを活用し、京都の水にまつわる風景を案内する地図である。大きなポスターのようであるが、折りたたんで、コンパクトに持ち歩くことができる。
「このマップは、実際に開いて、京都を歩いてもらいたいと思って作りました。本を作ってから、展覧会を企画したり、地図を出版したのは、このプロジェクトを通じて得た内容を実際に街に出て使うことができる機能的なものに落とし込みたいと考えてのことでした」
必要に応じてメディアを使い分ける。「水のことを知ってほしい」という思いを原動力に、粘り強く手間をかけて、多様なコミュニケーションの手段が採られていることが、「Water Calling」を際立ったプロジェクトにしている。

地図は広げるとかなり大きいが、1枚目の写真のように、立体的に眺めたりして楽しめる。ドローイングの裏面に、場所や歴史など、それぞれに呼応するテキストが書かれていて、水を辿って京都を知ることができる。デザインはサイトヲヒデユキさん