大正から昭和にかけて建てられた古い建物とその活用について考えていく最終回。第3弾「旧若林邸」は日本海側の離島、佐渡島にある。
この建物が再生へと歩みはじめたきっかけは、東京で美術を学んだ古玉かりほさんが故郷の文化財の現状を変えるべく、佐渡に戻ったことにはじまる。
草の根的に集めた寄付金と、手探りで獲得した助成金という限られたリソースで、傷みの激しい建物を徐々に修復してゆく道のりは、聞けば聞くほど過酷だ。
それでもあくまで地域主体で、共同で文化財を再生させようとするのはなぜか。背景にはかつて民俗学者・宮本常一が導き、佐渡の人々の間で実践された、文化は住民主体でつくり、守るという伝統があるという。
一般社団法人 佐渡古文化保存協会の業務執行理事として「旧若林邸」の再生を主導的に取り組む古玉さんと、同協会の代表理事で玉林寺住職の三浦良廣さん、そして建物の修繕に手を貸す文化財サポーターの方々に、地域遺産として建物や文化を守り、継承するプロセスと、その思いを聞いた。