4)自由な創造性をひきだす 水を得たように
ワークセンターかじま2
「常滑でやきものに関わるつくり手たちと地元の福祉施設の障がいのある人が連携し、新しいものをつくりました。施設の敷地内で採掘した土をはじめ、陶業、陶芸の様々なつくり手の土を用いて布を染めたり、紙に漉きこみました。建築陶器メーカーと新しいタイルの制作なども行い、産地ならではのものづくりを通して、これからの産業や表現に生かす取り組みを展示します。」
「NEW TRADITIONAL展 in 常滑」(以下、ニュートラ展)の開催にあたっての、高橋さんの言葉である。
地域の陶芸・陶業と福祉という2つのフィールドで高橋さんが培ってきた関係性が、まさに土によって結び合わされたのだった。それはまた、常滑ならではの可能性をしめす展示ともなったのではないだろうか。
かじまの利用者は、タイル制作のコラボレーションにおいて自由な創造性をぞんぶんに発揮した。建築家で水野製陶園ラボの水野太史さんがタイルを用意し、釉薬や生地をつくる準備をして、利用者がそれを使って絵付けしていく作品だった。
絵付けをしたかじま利用者のひとり、杉江さんは「水を得た」ようにいきいきと取り組んでいたという。
———高橋さんと水野さんが来なかったら、ずっと自動車部品をやっている人生だった。人生が変わったんだろうなって思います。(桜庭)
ニュートラ展を経て、かじまでは「サタデーワークショップ」が始まった。月1回土曜日に半日、高橋さんの企画で土染めをしたり、土を使ったハガキづくりをしたりするようになって、3年目となる。
———毎日の利用者さんが約40人いるんですけど、希望者は15人ぐらいで落ち着いています。利用者さんにもいい変化がありましたね。高橋さんが「これいいね」とか言ってくれると説得力があるから、みんないきいきしちゃって。すごくキラキラして「サタデーワークショップをやりたいから」と言ってかじまに来たりとか。(桜庭)
———僕が通い始めてから、杉江さんたちがつくったものを見せてくれる、というコミュニケーションが生まれたときはすごく嬉しくて。ワークセンターかじまの時間というか。そういう流れを止めたくないよね、っていうのがサタデーワークショップです。
そして、彼らは(制作することで)勤務していることになっているんです。ここでの仕事として創作活動という枠ができたことが大きいな、と思って。(高橋)
杉江さんをはじめ、卓越したデザインセンスのある作り手と作品をどう見せていくのか。それはまた、高橋さんのミッションでもあった。