アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#119
2023.04

ゴミを「自分ごと」化する

1 ゴミ拾いをエンターテインメントに スポGOMIの実践
4)分け隔てなく、ひとつになってやりたい

まだ世の中にないものを伝え、広めていくことは難しい。しかし馬見塚さんには、スポGOMIを開催するたびに感じる確かな手応えがあった。

———長年活動されているゴミ拾いの団体の方から、スポGOMIなんてだめだよ、ふざけてる、と言われたりしてすごく悔しい思いをしたんですよね。でも参加者が楽しそうなのも、その後の行動変容も見えていたので、助成金に頼らず自分たちの価値を高めてやっていけると思っていました。それには実績をつくって第三者の目を入れるしかないと思って、国立環境研究所に話をしに行きました。

そこで、ひとりの研究者がスポGOMIに目をつけ、参加者を対象に2年間のアンケート調査を行ったところ、ゴミや環境問題への行動変容が実証された。その結果が環境学会で発表されると周囲の理解が高まり、はじめは自治体から、そして2013年にオリンピックの開催地が東京に決定し、2015年の国連サミットでSDGsが採択されると企業からの問い合わせが増え、さらに海外からも問い合わせがくるようになった。以来、開催した大会は国内外で延べ1200回、参加者は11万人にも及び、ついに今年はスポGOMIワールドカップが開催されることになった。

———はじめたころは、まさかここまでくるとは思いもしませんでした。時代の流れもあったと思いますが、いろいろあっても続けてきたこと、分け隔てなくだれとでも一緒にやること。それしかないです。環境問題へのアプローチの方法はさまざまですが、海洋ゴミにしても脱炭素にしても、あらゆる環境問題を考えるきっかけにはスポGOMIがいちばんだと思っています。そういう意味でも思いを同じく活動していく人なら誰とでも、何の壁もなく、ひとつになってやりたい。国によってもゴミの分別の仕方が違いますし、100人集まればテロとみなされる国もあります。多様性を持ってアプローチしていきたいですね。

生活文化や考え方の異なる相手とでも垣根なく一緒にやる。その馬見塚さんの姿勢はまさにスポーツマンシップ。スポGOMIが裾野を広げた大きな理由のひとつなのだろう。馬見塚さんのもとには今、他の社会課題×スポーツでも何かできないかという依頼が来ているという。