5)「スポGOMI」がなくなる日を目指して
スポGOMIのもうひとつ大きな特徴は、地域を巻き込んで行うことだ。一色海岸でも何人もの大人が参加して運営をサポートしていたが、スポGOMIからのスタッフは馬見塚さんのほか1名のみ。あとは担任の先生の呼びかけで集まった地域のボランティアメンバーだった。
———依頼があってスタッフをそろえて準備もこちらで、っていうのは一切やらず、ひとつ大会がきまるとスポGOMIから出す担当者はひとり、多くても2人です。当日の運営、受付、人員整理とか計量も地域の方にサポートしていただきます。なぜそうするかというと、開催場所の動線や安全面の確認の上でもそうですし、僕らがどっと行くと交通費も経費もかかってしまうこともあります。なにより自分たちで開催した達成感を主催者も味わってくれて、終わったあと自然に反省会がはじまるんです。次にどうしようというアイデアが生まれる。それは大事ですね。ルールづくりでもローカルルールを大事にしていて、たとえば鹿児島大会の時は明治維新の遺跡とか西郷さんの銅像をチェックポイントにしたり、長野では信州蕎麦の店に必ず寄ったり、そうすると自分のまちを知るきっかけにもなります。
参加したり、主催したりすることで当事者意識が生まれ、次の年、また次の年と連続で開催することにより地域に根差す。馬見塚さんは、そうやってスポGOMIが自分の手を離れ、サッカーや野球のようにそれぞれの地域や学校で自由に楽しめるスポーツになることも望んでいるという。その先に見る未来とはどんなものなのだろう。
———僕たちのゴールは「この世から私たちの活動がなくなること」です。国内もほとんどの都道府県でやってはいますが、まだまだ知らない人もたくさんいますし、とにかく活動を続けていくことですよね。今日みたいに小学校でなら大掛かりでなくやれるので、6年生はスポGOMIを一度はやってから卒業するとか、義務教育のなかにどんどん入っていきたい。スポGOMIを経験した子たちが他の大会に出てきてくれたら。その最初のきっかけが学校でできたら嬉しいです。以前、ある大会で優勝した子たちが、自分たちでスポーツ落書き消しという競技を地域で開催したと聞いて、それは嬉しかったですね。
スポGOMIは、エンターテインメント化することでゴミ拾いのハードルを下げた。観察力と想像力を働かせ、なにより実際に手を伸ばして拾ってみることで、ポイ捨てされたゴミを自分ごとにするきっかけにした。学校で参加した、知り合いに誘われた、少し環境問題に興味があった、どんな理由であれスポGOMIを楽しむ人が増えれば、目指すゴールはまた一歩近くなる、そんな希望を持つことができた。
生活すれば、ゴミが出る。そのことには終わりがない。見ないふりにも限界がある。どうせ背負っていく重荷なら、楽しくつきあう方法を見つけて、軽やかに背負いたい。次号では、日々の買い物を通してゴミを減らす提案で、身の回りに小さな変革を起こしている「くるん京都」の取り組みを紹介する。
https://www.spogomi.or.jp/
1973年東京都生まれ。京都在住。会社勤務を経て2013年よりフリーランス編集・ライター。主に地域や衣食住、ものづくりに関わる雑誌、WEBサイト等で企画・編集・執筆を行う。
1977年京都府生まれ 現在東京都在住。高校・大学と写真部。スタジオ勤務、カメラマンアシスタントを経て2003年よりフリーランス。クライアントワークとしてのポートレイトや料理撮影に加え、旅と日常の間にあるものを写真に残す。近年は主に東アジアで「おはしのある風景」を撮影している。
1992年鳥取県生まれ。京都の編集プロダクションにて書籍や雑誌、フリーペーパーなどさまざまな媒体の編集・執筆に携わる。退職後は書店で働く傍らフリーランスの編集者・ライターとして独立。約3年のポーランド滞在を経て、2020年より滋賀県大津市在住。
文筆家、編集者。東京にて出版社勤務の後、ロンドン滞在を経て2000年から京都在住。書籍や雑誌の執筆・編集を中心に、アトリエ「月ノ座」を主宰し、展示やイベント、文章表現や編集、製本のワークショップなども行う。編著に『辻村史朗』(imura art+books)『標本の本–京都大学総合博物館の収蔵室から』(青幻舎)限定部数のアートブック『book ladder』など、著書に『京都でみつける骨董小もの』(河出書房新社)『京都の市で遊ぶ』『いつもふたりで』(ともに平凡社)など、共著書に『住み直す』(文藝春秋)『京都を包む紙』(アノニマ・スタジオ)など多数。2012年から2020年まで京都造形芸術大学専任教員。