アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#119
2023.04

ゴミを「自分ごと」化する

1 ゴミ拾いをエンターテインメントに スポGOMIの実践
1)スポーツとしてのゴミ拾い

葉山御用邸の目の前に、緩やかな弧を描いて広がる一色海岸大変美しく、冬は訪れる人も少ないせいか、ゴミなどほとんど見当たらないように思える。そんな静かな海辺も、子どもたちがやってくると賑やかになった。全員集合すると担任の先生からの朝の挨拶に続いて、スポGOMI主宰者の馬見塚健一さんからルールブックと地図、ゴミ袋、ゼッケン、トングが配られ、ルール説明が行われた。

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⾺⾒塚健⼀さん

スポGOMIはあくまでもスポーツなので、ルールにのっとって競技を行うこと。配付された地図の範囲内で、時間内に行うこと。チームバラバラにならず、まとまって行動すること。自然物や粗大ゴミ、危険なものは拾わないこと。ゴミの分別を守ること。拾うゴミの中身でポイントが違うこと。たとえば、燃えるゴミは100gあたり10ポイント、資源ゴミのペットボトルは15ポイント、環境負荷の高いタバコの吸い殻なら100ポイントなど、集めたゴミの量だけでなく質についても考えさせるものとなっている。まちなかで行う場合は、ここに「走らないこと」が加わり、だれもが公平に、安全に競技に参加できるように配慮されている。

今回は小学生が対象ということもあって馬見塚さんによる事前授業が行われた。子どもたちがチーム分けやネーミングも自分たちで行い、仲間と戦略を考え、担任の先生が驚くほど活発に質問が出たという。ゼッケンを身に着け、トングを手にすると、子どもたちの高揚感が伝わってきた。このワクワクを生み出す力が、エンターテインメントの強みだ。準備が整うと、全員で「ごみ拾いはスポーツだ!」の掛け声をかけ、それを合図に競技が始まった。4人1組8チーム、それぞれが海岸のあちこちへと散らばっていく。

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ゼッケンは⼤会ごとにオリジナルのものを着⽤。気持ちを⾼めるアイテムでもある / 全員が新潟県三条市にある永塚製作所のトング「MAGIP」を使って競技に挑む。⼀般の⽕ばさみよりも⻑く設計されており、前かがみにならずゴミを拾うことができる優れもの