2)コロナ禍でのベストを探り、改革をつなげる
2022年のわらじまつり初日は、総勢800人以上が1部、2部に分かれてパレードを行った。前半と後半で30分ずつ、大アンサンブルによる生演奏が続き、団体ごとに老若男女が踊り歩く。基本を踊った後に、アレンジを大胆に加えた踊りもあって、ヴァリエーション豊かだ。観客は踊りに加われなかったが、かけ声とともに、みんなが腕を突き上げる。一体感がある。
一日目が終わった後、大友さんはほっとしていた。
———2019年に新しく改革したばかりの祭りが、いろいろ試しながらやっていかなきゃいけない時に、コロナで2回目以降ができなかった痛手はめちゃくちゃ大きいと思う。だから今回は、やれただけでうれしい。人数もだいぶ少ないし、(感染症による)当日のキャンセルもあったりして、完全なかたちじゃないけど。
大友さんは改革を引き受け、全体の方向付けを行って、2019年の祭りをプロデュースした。その後は当初から宣言していたとおり、「福島のみんなが、自分たちでやっていくことだから」とかかわっていないし、口も出さない。見守る立場を取っている。
2019年のわらじまつりは、1日目に従来の、2日目に新生の祭りを行うという形式だった。
筆者は実際に見ることはできなかったが、記録映像や関係者の話からすると、新旧の特性をそれぞれ打ち出し、めりはりの効いた2日間となったようだ。
1日目はイベント満載。わらじを担いでの「わらじ競争」に始まって、ヒップホップ調に編曲された「わらじ音頭」が流れ、それに合わせて女の子たちが創作ダンスを踊る。わらじ綱引きや健脚わらじパレードなど、出し物も充実していた。
一方2日目は、祭りのための「わらじまつり物語」を基にした構成だ。物語に出てくる大百足と大蛇が南北からやってきて、中央で戦う。太鼓と笛の大アンサンブルの生演奏に、大友さんの「スペシャルビッグバンド」も加わって、音楽と踊りで物語を盛り上げる。最後は観客も踊りの輪に加わり、大きな渦が生まれていた。
こうして、新生わらじまつりは鮮やかに登場した。大成功に見えるが、実施する側には、反省や課題もたくさんあったことだろう。音楽や踊りをはじめ、さまざまな改良を進めていこうとしたところに、コロナ禍である。この3年はみんなで集まって練習することもできなかった。そもそも開催できるかどうかに始まって、何もかも不確定な中、2019年の熱気を引き継ぎ、一定のクオリティをもって2022年の祭りが行われたことは、実行委員会を始め、参加者の意志と努力の賜物だと思う。
もっとも、大規模には行えないし、県外からも多数あった参加者も地元中心となる。福島市内外の老若男女で編成していた太鼓隊は、町内会以外の人は減っていたようだし、踊りは地元の団体や企業単位のパレードだった。それもまた、限られた状況下でのベストを探った継続のありかただろう。