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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#112
2022.09

食と農の循環をつくりなおす

2 「食農教育」と「学校食」でひらく未来 徳島・神山町

1)食を身近に お弁当プロジェクトから

樋口さんは徳島市で生まれ育ち、大学卒業後はずっと小学校の先生をしていた人だ。多忙な教員生活を送っていたとき、同僚の先生が炊いてくれた玄米ごはんの味わいに、「なんでこんなにおいしいんだろう」と驚き、食への興味をもちはじめたという。そのとき出会ったのが、オーガニック素材にこだわり、地粉と呼ばれる国産の中力粉(うどん粉)のパンや発酵食などのつくり方を教えるお料理教室「白崎茶会」。料理の楽しさ、自分でつくるごはんのおいしさを知り、2016年春に徳島に戻って地粉のパン教室を開くことにした。

「地元に戻るならオーガニックな食も学びたい」と考えていた樋口さんは、ちょうど神山町でフードハブが立ち上がったことを知る。話を聞きに行って、地元の食べ物を食べる大切さを子どもたちに伝える食育の取り組みもあることに惹かれ、2016年9月からフードハブに参画した。

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NPO法人まちの食農教育 代表・樋口明日香さん

———立ち上げ当初の食育の捉え方は、生活改善グループなど地域のお母さんたちと一緒に料理の場をつくっていこうというものだったと思います。ところが入社してすぐの9月に、神山校(当時は神山分校)の生徒たちと一緒に『お弁当プロジェクト』がはじまったことで、小さいながらも食と農の循環をつくる最初のイメージができていきました。

神山校では、11月に収穫祭を兼ねた文化祭「神農祭」が開催され、地域の人たちも訪れる。樋口さんたちは、この神農祭で高校産・神山産の野菜をつかったお弁当を販売するプロジェクトを立ち上げた。

———プロジェクトがはじまる前、「高校生と関わるうえで何を大事にしたいか」をフードハブのメンバーや先生方と一緒に話し合ったんです。たとえ地元の味であっても、あまりにも高校生とかけ離れたものをつくってもしかたがない。じゃあ、高校生が食を身近に感じることはなんだろう? と考えるなかでお弁当に着目しました。

町内産の食材をただ使うだけでなくその割合(産食率)を考えてみる。原価率の計算を通して、仕入れコストや食の流通に目を向ける。調理のなかに、地元のお母さんたちの知恵と工夫を組み込んでみる、など。樋口さんたちは、小さな循環のサイクルをイメージできるようにお弁当プロジェクトを組み立てていった。高校生たちは、できるだけ学校や町内の畑で採れる野菜を使うメニューを考案し、フードハブの料理長にサポートしてもらいながら試作・試食。コロッケをメインにした「ほくコロ弁当」を完成させた。神農祭で販売するとあっという間に完売した。翌年からは、自分たちで野菜を植えるところからはじめる「一からつくるお弁当」へとバージョンアップしていった。