アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#111
2022.08

食と農の循環をつくりなおす

「小さいものと、小さいものをつなぐ。」徳島・神山町1
1)まちを将来世代につなぐために、循環の仕組みをつくる

徳島駅から車で40分ほど、山あいの小さなまち・神山町に着く。鮎喰川に沿って集落がぶどうの房のように点在し、杉やヒノキを植林した濃緑の山々の裾を、石積みに支えられた小さな段畑が彩る。田植えがはじまるとあちこちの水路から水の音が響き、夏には川で泳ぐ子どもたちの声が聞こえる。

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このまちが、 “まちづくりの成功事例”として全国的な注目を集めるようになってもう久しい。

国内外のアーティストの滞在制作を支援する「神山アーティスト・イン・レジデンス」がはじまったのは1999年、もう20年以上前だ。2004年には光ファイバー網が町域をカバーし、企業のサテライトオフィスの呼び水にもなった。これらの取り組みを仕掛けたのは、まちの人たちが設立したNPO法人グリーンバレー。大南信也さんら理事たちは、何かをはじめようとする人たちに「やったらええんちゃう(Just Do it!)」と背中を押し、手助けを惜しまなかった。彼らの気風に惹かれて移住する人は増え、2011年度は神山町誕生(1955年)以来、初めて社会動態人口が増加に転じるという“奇跡”も起きた。

しかし、人口減が止まったわけではない。アネモメトリで2013年に取材した時(#2#3)と比べても6088人から4943人(2022年度5月1日現在)に。町の主産業である農林業は、若い世代の町外流出によって後継者が不足している。担い手の高齢化は進み、やがて耕作放棄地が増えていく。

「まちを将来世代につなぐにはどうしたらいいだろう?」

2015年、地方創生の流れのなかで、神山町は「働き盛りで、かつ将来世代に近い子育て年齢前後の人々」約30名によるワーキンググループをつくり、約半年をかけて創生戦略の策定作業を行った。2016年春、ワーキンググループの議論は、「まちを将来世代につなぐプロジェクト(以下、つなプロ)」としてまとめられた。

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2016年に発表された神山町の創生戦略「まちを将来世代につなぐプロジェクトv.1.2」より

つなプロからは、官民共同の事業がいくつも立ち上がったが、フードハブもそのひとつ。「循環の仕組みづくり」の実行プランとして、神山町役場神山つなぐ公社株式会社モノサスが共同して立ち上げた。