「食べる」は「生きる」ことに必要不可欠ないとなみだ。しかも、私たちが口に入れる食べものは、社会のしくみや人のつながり、大地や海という自然にまでつながっている。そんなことは、誰だって頭では理解している。だけど、この一文のなかに風景が見えるだろうか。土の匂いや水のつめたさを思い出せるだろうか。
ふだん、京都で暮らしているわたしにとって、食べ物は、「必要に応じて買いに行く」ものである。誰がつくってくれたのかも知らずに、野菜やお米を口に入れている。食の風景といえば、スーパーに積み上げられた野菜や飲食店のメニューだったりする。
わたしのなかで、食の風景にひろがりが生まれたのは、ある連載のために徳島・神山町に通うようになってからである。神山では「これおいしいけど誰がつくったの?」「○○さんだよ」という会話がある。畑のそばを通りかかったときに、「たくさん採れたから」と農家さんに野菜を分けてもらうことも珍しくない。とりわけ大きな影響を受けたのは、2016年4月に神山で設立された農業の会社、株式会社フードハブ・プロジェクト(以下、フードハブ)の友人たち。
「小さいものと、小さいものをつなぐ」「少量生産と少量消費をつなぐ」をコンセプトに、「育てる」「つくる」「食べる」「つなぐ」という食と農の循環をつくりなおしている人たちだ。
これから、彼らの取り組みを3本の記事で書いていく。まずは、フードハブが生まれた背景について。そして、「小さいものと、小さいものをつなぐ。」現場で、「つくる」と「食べる」を担う3人の話を聞いてみよう。