子どもをいかに育てるか。それはこの先を考えるにあたって、たいへん大きな課題だと思う。そのための「場」が全国各地にひらかれている。義務教育以前の、保育園や幼稚園。さらにはオルタナティブなスペースなど、ありかたはさまざまだ。そこでは、子どもひとりひとりの個性を育みながら、安心して居られるような場所をつくる試みが行われている。
本特集では、アーティストや企画者など、表現にかかわる人々がひらいた3つの場に着目し、それぞれの取り組みを紹介していく。なお、特集としては、2021年度の記事#100、#101から始まっている。福岡県福岡市の「いふくまち保育園」「ごしょがだに保育園」と、園をひらいた酒井咲帆さんの話である。地域とじっくりと関係をむすびながら、多様に「ひらかれた」場を目指す活動がすすめられていた。
今号では、秋田県南秋田郡五城目町のギャラリー「ものかたり」を取り上げる。ものかたりは子どものための場ではない。もちろん、子どもを対象としたイベントやワークショップなどは行っているが、もっと異なる視点から「育てる、育つ」ことを試みている。
この場をひらいたのは小熊隆博さん。五城目町に生まれ育ち、関東・関西で学び、直島でのアートの仕事を経て、五城目町に戻ってきた。人口減少が続く地元で、自身のキャリアを生かして、何を試みることができるのか。小熊さんの「ものかたり」での活動をくわしくみていきたい。