4)経年の変化もふくめ、森と作品を育てる
今年の参加アーティストは約70組。それぞれが長い時間をかけて、時にリサーチをしたり、滞在制作しながらこの場にしか生まれない表現を行っているのも飛生芸術祭の特徴だ。
森の入り口には、根曲り竹のトンネル《topusi(トプシ)》という作品がある。この作品をつくったのは石川大峰さんだ。グラフィックデザインをベースに、ロックフェスのアートスペースも10年以上手がけている。石川さんも、飛生の森づくりプロジェクトがはじまった同時期に、作品をつくりはじめた。
この作品の素材となっている「根曲がり竹」も、飛生の語源と深くかかわりを持つと、石川さんは解説する。
———飛生の語源「Tupiu」には「黒い鳥が多くいるところ」のほかにも、「根曲り竹(トップ)が多くある(ウシ)ところ(イ)」という意味があるんです。黒い鳥がいるという神話が飛生の森づくりのストーリーになっていますが、僕は根曲り竹の語源にピンと来て、森の入り口を根曲がり竹でつくったんです。
《topusi》は昨年より広がり、大きくなっていた。初めて来たころは、もっとずっと小さいものだった気がする。石川さんに聞くと、それもそのはずで、この作品は「毎年少しずつ増殖している」という。
———防腐剤を塗れば長持ちさせられるんですけど、使っていません。なるべくそのままにしているから、補修の必要もあるんです。最初は緑色で柔らかい竹が、だんだん黒くなったり白くなったりして、硬くなったり割れたりもする。常設作品としては実験的ですが、その色の変化や劣化という時間軸も含めて一つの作品と考えています。
作品の経年変化もさることながら、多くのアーティストも森づくりに参加したり、森づくりのあり方を見守りながら、この場ならではの表現を何年もかけて探り、広げ、生み出し続けている。そのあり方は、無論、著名アーティストでも変わらない。