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アネモメトリ -風の手帖-

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#49

空を彩る傘の街
― ポルトガル アゲダ

リスボンから特急電車と落書きだらけのローカル線を乗り継いで2時間半ほどの場所に、アゲダという小さな街があります。ここでは2006年から夏の1ヶ月間、アジットアゲダと呼ばれるアートフェスティバルが開催されています。元々は地元の人々向けに開催されていたフェスティバルですが、今では国内外からも人が訪れる、ちょっとした名物になっています。
フェスティバルの規模は年々大きくなっており、今では期間中ほぼ毎日街のどこかでイベントが開催されます。その内容もパレードやコンサート、インスタレーションの他、スポーツイベントなど、とても幅広いのが特長です。その中でも特に注目を集めているのが2013年から始まった「Umbrella Sky Project(アンブレラ スカイ プロジェクト)」です。
このプロジェクトはその名の通り、まるで傘で空を埋め尽くすかのように、商店街に無数の傘がかかるものです。元々はポルトガルの強い夏の日差しを除けるため、という側面が強かったようですが、カラフルな傘を用いることで街そのものを彩るアートとして、人々を魅了しています。夏の日差しに照らされた傘の影は、カラフルな模様となって道路を彩り、人々を笑顔にします。
特に最近はSNSの発展によってこの傘のアーケードが注目され、国外からの観光客も珍しくなくなりました。アートフェスティバル自体は7月いっぱいで終了しますが、傘のアーケードは日差しが落ち着く9月下旬頃まで見られます。私は8月初旬にこの街を訪れたのですが、面白いことに国内外から観光客が来ようが、レストランはランチタイムが終わると一旦店を閉めるし、商店も平気で夏季休業していました。「人を集めよう!」といった空気は感じられず、あくまで自分たちのためにやっているという雰囲気が漂っています。
過剰な土産物屋のアピールや取って付けたような違和感はなく、しっくりと街の風景の一部として傘のアーケードがなじんでいたことがとても印象的でした。気を張らずに自分たちが楽しいことをしている。人々のリラックスした気持ちを、傘は反映しているのかもしれません。

佐谷由希子)

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