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アネモメトリ -風の手帖-

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特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#32
2015.08

状況をデザインし、好循環を生みだす

前編 作り手と一緒に考え、つくり、発信する

本誌の特集では、「地域とものづくり」を大きなテーマとして取り上げてきた。そうするなかで、「伝統産業の今とこれから」についても考えてきたつもりである。
地域に根ざした技術や手わざは全国に数多あるけれど、今の時代に合わなかったり、作り手の後継者がいなかったりと、状況はとてもきびしい。「ローカル」がキーワードとなり、あちこちで町おこし、村おこしが行われていても、それが結果に結びつくケースは決して多くはない。
それにはいくつも理由があるけれど、ひとつ大きいと思うのは、外からの一時的な関わりかたである。外部のひとが地域に入り、プロジェクトなどを行い一時的に盛り上がったとしても、それが持続せず、外部が去った後は地域のひとたちだけでは何もできない、というようなことも話に聞く。外の視点を取り入れて地域を変える可能性は大いにあるが、その場限りでは何も変わらない。住民が主体的にものごとに関われる仕組みを考え、良い方向に回り出すような「好循環」を生みだすことが大切なのではないだろうか。

デザイナーの柳原照弘さんは、ものごとが良い方向に回り出す仕組みを考え、実現してきたひとである。
1976年生まれの柳原さんは、大阪の大学を卒業して数年後、自身の会社を立ち上げ、大阪や京都を拠点に個人で活動をすすめてきた。プロダクトや空間をデザインするのが仕事だが、ただ単に商品を開発したり、建物をリノベーションしたりするわけではない。関わるひとや会社の「本当に必要とされていること、求められていること」をとことん考え、その状況をデザインしていくのだ。「商品開発ありき」ではなく、「目指すところのために、商品開発が必要だった」という考え方である。
「何を、どうつくりたいか」ではなく、「何のために、どう使いたいか」。
シンプルなそのことを実現するために、関わるひとびとといっしょに考え、提案し、ものをつくり、ふさわしいかたちで発信していく。それが柳原さんのやりかたである。

柳原さんは自身のやるべきことをどう捉え、どのように進めてきたのだろうか。前編では、柳原さんの原点やこれまでの仕事を取り上げながら、今に至る道筋を辿っていきたい。

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(上3点)1616 / arita japan の製品と有田の工房で打ち合わせする柳原さん

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(上3点)京都・北山の柳原さんアトリエにて。中はKARIMOKU NEW STANDARD の製品、下はスタッフのFanny

柳原照弘(やなぎはら・てるひろ)
1976年香川県生まれ。デザイナー。2002年自身のスタジオを設立。デザインする状況をデザインするという考えのもと、国やジャンルの境界を超えたプロジェクトを手がける。KARIMOKU NEW STANDARDや1616 / arita japan等の国内ブランドの設立に携わるほか、国外の企業にもデザインを提供している。作品所蔵:フランス国立造形センター(CNAP)等。現在は佐賀県有田焼創業400年事業「2016 / project」ディレクター、DESIGNEASTディレクター。共著に「リアルアノニマスデザイン」(学芸出版)、「ゼロ年代11人のデザイン作法」(六曜社)など。
http://teruhiroyanagihara.jp/
長く大阪を拠点にしていたが、ここ数年は京都の北山で別荘のような一軒家にアトリエを構える。ちなみに北山のアトリエを一部改装し、2015年7月、新たにギャラリー「vitrine kyoto」もオープンした。

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