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アネモメトリ -風の手帖-

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#69

夏越の大祓
― 野村朋弘

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(2014.06.29公開)

六月も終わろうとしている。年度で考えると、まだ二ヶ月と考えられるが、正月から考えると一年の半分、ちょうど折り返し地点を迎える。
この六月。異称は「水無月」である。旧暦六月は、現在の暦で考えると七月や八月に相当するので夏の盛りとなり、降雨が少ない時期といえる。但し、今日の暦でいう六月はちょうど梅雨の時期となっており、この異称はそぐわないのかも知れない。

さて、六月の年中行事に「大祓」(おおはらえ)がある。十二月にも同様の行事が行われており、六月のものは「夏越の大祓」とか、「六月祓」と呼ばれている。六月、十二月は一年間を二分した時に最後の月にあたり、それまで身についた罪や災厄、そして穢れを祓うために古代の宮中でも行われていた。行事の初見は天武天皇の時代に遡る。それが定例化され『大宝律令』の神祇令で規定されるに至る。宮中の行事では大祓詞を百官が読み万民の罪や穢を祓い除いた。

今日、我々が神社で見ることが出来る夏越の大祓の、最も一般的な行事といえば「茅の輪」くぐりだろう。それぞれの神社の本殿前に、茅を束ねた大きな輪が作られる。この輪を左、右、左と廻る作法が一番多いだろうか。この茅の輪をくぐる時、「水無月の夏越の祓へする人は 千歳の命 延ぶというなり」と唱える。これも淵源を調べると、室町時代の一条兼良の記した『公事根源』にも記録があった。つまり、十五世紀から今日まで、600年は確実に続けられている行事作法といえるだろう。

また、茅の輪と同じように行われているものに「人形」(ひとがた)がある。
人型に切り取られた紙に名前を記し、躰を撫でて、息を三度吹きかけて川に流すというものである。半年間溜まった罪や災厄、そして穢れを人形へ移し、水に流す。また地方によっては、自ら川や海に入り、身を清浄化する行事もある。

こうした一連の行事は、半年間の区切りとして認識されていた。一方では、夏は最も疫病などが流行するシーズンでもある。清浄化する際に衣も清めて、その対策とするためでもあった。
単なる伝統行事というわけではなく、古代の生活文化から生み出され、受け継がれてきたものといえるだろう。現代人のライフスタイルと無縁という訳ではないのだ。
忙しい日々の中、振り返る機会はなかなか無いが、「夏越の大祓」のため神社に設置された茅の輪を見つけたら、立ち止まってみては如何だろうか。