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アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#26
2015.02

とつとつとした点描−美術家・伊達伸明さんの仕事

前編 多様な作品を俯瞰する

その名が示す通り、建築物からウクレレをつくる「建築物ウクレレ化保存計画」で知られる美術家・伊達伸明さんの仕事は、実は網羅しつくすことが不可能なほど多岐にわたる。ウクレレづくりの他にも、例えば建物の外装に使われる波板や、電柱の表面を膨大な量の写真に撮りため、かつて石炭の代わりに使われていた亜炭という素材について仙台の人々に聞き取りを続け、取り壊される建物の「お見送り」などを行う。「何のために?」という疑問が浮かんでくるが、その思いをすり抜けていくのが伊達さんの特徴とも言える。

そんな伊達さんの活動をとらえるためのヒントを与えてくれる文章がある。振付家・ダンサーである砂連尾理(じゃれおおさむ))さんが2010年から京都は舞鶴の高齢者とともに行うパフォーマンス「シリーズとつとつ」にコラボレーターとして伊達さんが寄せた「とつとつな音」だ。ひとつのプロジェクトのために書かれた文章だが、ここには伊達さんの活動そのものにとって大切な考え方がある。一部分を引用してみたい。

未整理の過去と手さぐりの未来との間に
点描でしか描けない現在がある。
それを描く音、とつとつ。

作品をつくることを通して、ひとや建物に関わり、またまちへと関わる伊達さんの活動。その背景には、「未整理の過去」と「手さぐりの未来」という見方とともに、「とつとつ」という言葉で仄めかされる“点描”という行為がある。線ではなく点で描いていくということ。これをキーワードにして、時間軸という線をたどりながら伊達さんの現在の活動を見ていこう。

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(上から)伊達さんのご自宅でもある工房の壁に掛けられたウクレレの数々 / 一本一本のウクレレのなかには、それぞれいつ、どの建築物からつくられたものかが記されている /「豊中市民会館 おみおくり展」より。解体された建物についていた文字を、豊中市のあちこちに旅させ、記念写真のように撮影した

(上から)伊達さんのご自宅でもある工房の壁に掛けられたウクレレの数々 / 一本一本のウクレレのなかには、それぞれいつ、どの建築物からつくられたものかが記されている /「豊中市民会館 おみおくり展」より。解体された建物についていた文字を、豊中市のあちこちに旅させ、記念写真のように撮影した

MG_7521伊達伸明(だて・のぶあき)
美術家。1964年生まれ。2000年より、取り壊される建物の一部を使ってウクレレを制作する「建築物ウクレレ化保存計画」を開始。その他、まちの波板の撮影・収集も続けている。2012年より、仙台にて「亜炭香古学」プロジェクトを開始。2014年から2015年にかけて、ダンス公演「とつとつダンス part.2 愛のレッスン」に出演するなど、活動は多岐にわたる。