アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

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文化芸術関連参考URL紹介4

地域おこしや子どもの成長、医療現場など、さまざまな文脈のなかでアートは価値をもち得ることが、これまで見てきた活動の記録や紹介を通してわかってきました。今回はそれらに反して、なにか目的を達成するための一環としてではないアートの価値の生成に関わる部分へ視線を向けてみたいと思います。とはいえ、作品それ自体の純粋な価値というものが在ると言うのがもはや馬鹿げていることは自明でしょう。ここで注目するのは、商品としての作品の価値、作品につけられる値段が決定づけられるうえで重要な役割を果たす部分です。展覧会、芸術祭やウェブギャラリーなどで、わたしたちは比較的安い対価で作品を鑑賞することができますが、作品を所有するとなるとそれとは比べものにならない代価が必要になります。しかしその価格は、材料費や製造のための設備費、人件費などから算出される産業的な商品の価格と同様に定められるものではなく、場合によっては恣意的に映るかも知れません。金銭をともなった作品の流通に関わる現場は、どのように作品を語っているのでしょうか。はじめに、国内のギャラリーのウェブサイトを見てみましょう。

-MORI YU GALLERY
http://www.moriyu-gallery.com/

MORI YOU GALLERYは、京都と東京に画廊をもつギャラリーです。月に1、2回のペースで展示替えをおこない、積極的にアーティストを紹介しています。ABOUT USのページに掲載されている「画廊の方針」を見ると、「~であるべき」あるいは「~しなければならない」といった強い調子でギャラリーが理想とする作品のすがたが描きだされているのがわかります。このような積極的に作品について語っていこうとする姿勢は、SHOPのページからも伺えます。商品となっている作品にはひとつひとつ、どのような部分をいかに評価しているのかがコメントされているのです。

-Mizuma Art Gallery
http://mizuma-art.co.jp/top.php

それにたいして、どちらかと言えば淡々と作品とアーティストを提示しているのがMizuma Art Galleryのウェブサイトです。このギャラリーは北京とシンガポールにも拠点をもち、アジアを中心として国際的に活躍するアーティストの作品を扱っています。Artistのページを見ても、そのアーティストの個展やグループ展が列挙されているだけですし、個々の作品にたいしてもメディアとサイズといった基本的な情報しか掲載されていません。もちろん、実際にギャラリーに赴けば作品にたいする評価に触れることもあるでしょうが、ウェブサイトを見る限りでは、評価の基準は購買者に委ねられていることが伺えます。

-Art-Support.com【英語】
http://art-support.com/index.htm

つぎに、アーティストに向けて、作品を商品として流通させるための情報を提供しているウェブサイトを見てみましょう。これは、写真家を対象としたアメリカの情報サイトです。地域ごとのギャラリー一覧や美術館案内にくわえ、芸術や写真を対象としたNPOやアーティストの支援をおこなう組織の紹介も充実しています。また、Articlesのページには、写真家としてキャリアを積み重ねていくことやみずからの作品を商品として売ること、あるいは著作権の問題などについて実践的な立場から語った記事が公開されています。

Art-Collecting.com【英語】
http://www.art-collecting.com/index.htm

うえの写真家向けのウェブサイトと対になっているのが、こちらのコレクター向けのウェブサイトです。ギャラリーや美術館の一覧はうえのサイトと内容が被っていますが、こちらにはオークション情報やコレクションの際のアドバイスなどがあるほか、アーティスト自身のウェブサイトへのリンクも充実しています。これらの情報は、たとえばアーティストが作品形態ごとに分類されているなどある程度体系的に提供されていますが、基本的には莫大な情報の羅列で、ほしい情報にすぐ手が届くよう設計されているとは言えません。すこし勿体ないような気もしますが、根気強くページを見ていくことが必要です。

以上のように、商品としての作品という観点からアートを見直してみると、アートへの関わり方の異なる側面が見えてきます。とはいえ、ひとつひとつの作品の売り込みや買い手による評価が、芸術祭に招聘されるアーティストや展覧会に展示される作品の選定と必ずしも無関係ではないことは想像に難くありません。アートを取り巻く環境のひとつとしての作品流通に着目してみると、ほかの活動や展覧会との意外な結びつきが見えてくるかも知れません。
(井岡詩子)