愛媛県松山市にある「松山ブンカ・ラボ」という組織をご紹介します。
松山ブンカ・ラボは、松山市が策定した文化芸術振興計画に準じて、愛媛大学の寄付講座として地域の文化政策を担う組織です。オフィスは松山アーバンデザインセンター(松山市花園町)にあります。
2018年から始動したばかりですが、すでに多くの活動を実践されています。
「まちと文化とアートの学校」と称された連続講座は、毎回様々なテーマのもと、ゲストスピーカーを招いて開催されます。
2018年の初回では、文化芸術が町おこしや福祉や観光などと結びつきながら展開される事例が多い昨今の状況を冷静に振り返りつつ、アートとは何か、社会にとってアートの役割とはどのようなものか、アートの果たし得る可能性などについて、鶴見俊輔の限界芸術論などを引用しながら議論されました。
それ以降は、都市計画の専門家や私設の公民館を運営している方、子どもたちの居場所づくりのための教育施設を運営されている方などを招いて、社会の課題や問題についてアートの視点を持ちながらどのように関わることができるかについて議論されてきました。
2020年度は、この連続講座を「世界を想像するための6章」と題し、「文化的コモンズ」や「地域コミュニティとアートの関わり」、「場を作るアーティストの実践」などのテーマで全国からゲストスピーカーを招いて開催されています。
この他、定期的にシンポジウムやワークショップを開催したり、県外のアーティストを招き、約1年間に渡り松山の文化や歴史などをリサーチするアートプロジェクトを実践されています。
どのプログラムも自由に参加・見学することができ、毎回、多くの方の参加があります。
また、「まつやまアーティストミーティング」と題して、松山市や近隣に住むアーティストやアート関係者、アートに興味のある方々が一堂に会し、地域での活動状況を共有したり、分野横断的な活動を模索したりする場も定期的に設けられています。
ウェブサイトでは、プログラムなどの告知やこれまでの活動のアーカイブに加え、松山市近辺で文化的活動をされている方へのインタビュー記事を丁寧にまとめた「まつやま文化人録」などが掲載されています。また、松山市におけるコロナ禍の文化芸術の現状についてのレポートやコロナ禍の日本の劇場について専門家によるジャーナルを掲載するなど、日々変わりゆく文化的状況も記録されています。
県内の方の紹介、県内の方同士の交流の場の設定、県外の方との交流の場の設定が継続的に行われています。一過性のイベントと違い、人や場所を育てるこの種の取り組みは、継続する事が何より大切だと思います。松山ブンカ・ラボの今後の活動に大きな期待をしています。
2020年12月上旬、これまでの取り組みをまとめた『松山ブンカ・ラボ ドキュメントブック』が発行されました。
PDFをダウンロードすることも可能なようです。
興味のある方は、下記リンクよりのぞいてみてはいかがでしょう。
https://bunka-lab-matsuyama.com/information/1760/
(牛島光太郎)
松山ブンカ・ラボ
https://bunka-lab-matsuyama.com/