田代島は宮城県石巻市から約17㎞沖に位置する小さな島です。漁業や牡蠣の養殖が主な産業ですが、その一方で、全国の猫好きから注目されている、猫の聖地でもあるのです。
現在、島の人口はわずか61人ですが、猫の数は約130匹といわれており、人口のおよそ2倍の猫が住んでいることになります。猫がこの島で飼われるようになったのは江戸時代からで、養蚕の天敵であるネズミを駆除するためでした。あるとき、漁師が漁で使用する石を採取していた際、石が当たって猫に瀕死の怪我を負わせるという悲しい出来事がありました。心を痛めた網元が猫を祀る祠を作ったところ、大漁が続き、海難事故も無くなったことから、猫を神様として信仰するようになったと伝えられています。
島の中心部には、猫神様(美與利大明神)を祀った猫神社があります。猫がたくさんいる猫島は日本各地にありますが、猫を神様として祀っているのはこの田代島だけかもしれません。また、猫にストレスを与えないよう、犬の持ち込みを禁じているのも田代島ならではといえるでしょう。このように島全体で大事に守られているためか、猫たちはいつものびのびとしており、島内を歩き回っては、漁港や道の真ん中で寝転んだり、カフェや店舗に堂々と入り込んでは、看板猫のように振る舞っています。また、とても人懐っこく人見知りしないため、観光客にも怖気づくことなく擦り寄り、おもてなしに勤しんでいます。
猫島として注目されるようになったのは2006年頃、テレビ番組で取り上げられたことがきっかけでした。猫と遊んだり写真撮影をするため、各地から観光客が訪れるようになったのです。以降、公衆トイレが整備されたり、猫グッズの販売や飲食ができる施設もつくられ、観光客にもやさしい環境が整ってきています。
コバルトブルーの海に囲まれた猫いっぱいの島は、猫と島民が共存しながら、猫好き観光客にも癒しを与える猫の聖地なのです。
(成田有紀子)
参考
石巻市 田代島の概要
https://www.city.ishinomaki.lg.jp/cont/10053500/0050/3639/3639.html