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#144

中国・上海における美術館・博物館再開の動向とガイドライン
― 中国 上海市

中国・上海市でも新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ措置として、春節休暇中からほぼすべての施設が休館となりました。美術館・博物館も閉鎖が続いていましたが、3月中旬より再開する動きがみられました。上海博物館は、その中でもいち早く3月14日に再開し、閉鎖期間中に終了予定だった特別展も会期延長となりました。安全面に注意しながら、実際にどのようなガイドラインで観覧できるかを体験してきました。
観覧するために、上海博物館Webサイト上で実名での事前登録を行いました。観覧当日は、予約QRコード、身分証(外国人はパスポート)、健康確認QRコード(1)の提示が必要でした。さらには、体温検査(37.3度以下)、咳や痰などの症状確認、マスク着用などの検査もありました。検査場は待機する人混みも無く、スムーズに入館することができました。
特別展会場では、鑑賞時のソーシャルディスタンス(1.5m以上)を係員が注意してくれるため、密集は回避することができました。常設展も半分の規模に抑えられており、2時間以内の利用を呼びかける掲示もありました。エレベーター使用は4名以下で、レストランは営業せずペットボトルのみを発売するなど、細かく安全性が保たれていました。
この日は連休初日だったにもかかわらず、館内は人が少なく、観覧者もお互いに気遣いをしながら作品鑑賞していました。館のガイダンスにある1日上限2000人、同時観客者数の制限300人には達しなかった模様で、実にゆっくりと鑑賞することができました。
民間の美術館も同様のガイドラインで営業を再開しています。明珠美術館は、大型商業施設の8Fにあるため、商業施設入口でも、簡易検査(マスク着用確認、検温)がありました。美術館入口で再度検査をし、事前予約QRコード、パスポート、健康確認QRコードを提示して入館しました。
安藤忠雄設計で人気商業施設内ということもあり、徐々に入館者は増えていきました。書の展示が多く、おもわず作品に熱中し接近する観客に、係員がやさしく喚起するのが印象的でした。
上海市および中国国内で、ガイドラインがいつ解除になるかは現時点で不明ですが、ウイルス感染の可能性がある以上、実施は致し方ないでしょう。しかし、映画館などの施設が再開できない中、美術館・博物館はいち早く再開することができました。厳格にガイドラインを設ければ営業が出来ることと、実際の観覧者の意識も極めて高いことは、今回の体験を通じて強く感じるところでした。

(飯田一憲)

参照Webサイト

鑑真和上と唐招提寺東山魁夷作品展 日本語公式Webサイト
http://www.nikkei-events.jp/art/higashiyama/

上海博物館「上海博物恢复开放公告」(中国語)
https://www.shanghaimuseum.net/museum/frontend/articles/I00004254.html
上海博物館観覧ガイドラインが記載。

上海博物館 事前予約ページ(中国語/英語)
http://reservation.shanghaimuseum.net/BpsWebSale/Perform
当日を含む3日間分の予約が可能、個人のみ受付。

明珠美術館 WeChat公式ページ 営業再開とガイドライン告知(中国語)
https://mp.weixin.qq.com/s/UPSub-PWxc8X4tahjRPf3w
明珠美術館の観覧ガイドラインが写真入りで詳細に説明。

(1)
上海市の健康確認QRコード(随申)のこと。スマホアプリで個人の健康状態をグリーン、イエロー、レッドの3段階で表示。基本的にはグリーンのみが入館可能となる。
グリーン:問題なし
イエロー:重点地区への過去14日間滞在暦があり、経過観察が推奨される者、場合により入館できる
レッド:医療管理措置が未解除、退院報告なし、感染疑似の未解除など条件に該当する者、入館禁止

上海博物館 エントランス前入館検査場

上海博物館 エントランス前入館検査場

明珠美術館 入館検査

明珠美術館 入館検査

明珠美術館 館内消毒済の掲示

明珠美術館 館内消毒済の掲示