国立民族学博物館をご存じでしょうか。
この博物館は万博記念公園内、ちょうど太陽の塔の裏手にあります。世界最大の博物館機能と大学院教育の機能を備えた文化人類学・民族学の研究所として1977年に開館し、昨年40周年を迎えたばかりです。
黒川紀章が設計したユニークな外観を持つ鉄筋コンクリート造の建物は、地下1階地上4階建て、延べ床面積5万平方メートルという広大さを誇ります。
目玉は誰でも見学できる本館2階の展示場で、例えるなら世界中の生活雑貨や祭祀用具が集められた玉手箱です。展示場は地域別に構成され、オセアニア、アメリカ、ヨーロッパ、アフリカ、南アジア、西アジア、東南アジア、東アジア(朝鮮半島、中国)を経て、最後に日本の文化にたどりつくという流れになっています。
展示物は世界の人びとの暮らしがわかるように衣食住などの生活用品を中心としている点に特徴があります。音楽と言語については特設コーナーが設けられており、世界各地の太鼓やギターの展示、絵本『はらぺこあおむし』の各国版が手にとって読めるなど、実物を通して類似性や多様性を感じ取れるように工夫されています。
実はこの国立民族学博物館、日本万国博覧会(EXPO’70)テーマ展示プロデューサーだった芸術家・岡本太郎の発案で生まれました。
岡本太郎は1930年代にパリ大学の学生としてミュゼ・ド・ロム(人間博物館)で民族学を学び、絵画や彫刻を凌ぐ人類の営みの豊かさと多様性を体現するものとして強い衝撃を受けました。そして日本にも民族博物館があるべきと考えるようになったのです。やがてその想いはEXPO’70で現実となります。ミュゼ・ド・ロムがパリ万博の民族資料を受け継いで生まれたのと同様に、国立民族学博物館もEXPO’70の民族資料約2500点を引き継いでスタートしたのです。
40年かけて世界中から集められた民族資料は34万5000点にのぼり、今や世界最大の規模です。広大な展示場をつぶさに見て回るだけでも、ゆうに1日かかります。
皆さんもここで、岡本太郎が受けた衝撃を体験してみませんか。
(有田若彦)