大分県玖珠郡九重町。宝山にある宝八幡宮へ。ナビに案内された通りに行くと車3台ほどしか停められない狭い場所に辿り着きました。古びた鳥居が側にあることで、そこが神社の入り口であることは分かるものの、本殿がどこにあるのかここからは見えません。あまりの静けさに一気に身が引き締まり、鳥居に導かれるまま、目の前に現れた急な階段を登ることになりました。休憩場所もないただ一直線上に積まれた階段をひたすらと、いつゴールがやって来るかも分からない中で、でも上の方に次の鳥居があるしここを登ることは間違ってない、そう信じながら無心になって、息も切れ切れにやっと登りきりました。324段。これは煩悩の108の3回分。煩悩を3回踏みしめて身を清めるという意味があるそうです。登る前に知りたかった情報でしたが。
山の中にあるとても小さな神社ですが、全国八幡宮の総本社「宇佐神宮」の分霊が奉じられています。ここには宇佐神宮に伝わる、和気清麻呂を助けた300匹のイノシシたちの伝説、そして、宝山に埋められた平家の落人の財宝を守る白イノシシを見た者は幸を得る、という話が伝わっています。
そんな宝八幡宮ですが、2006年にお目見えされたとても珍しい白イノシシが、瞬く間にニュースになりました。宝山で偶然発見され、神社に奉納されたのです。ちょうど亥年をひかえるタイミングで起こった“伝説”の現実化は皆を沸かせ、一目その姿を見たいと多くの人が訪れました。平成と新元号が交わる今年も亥の年。きっとこの白イノシシたちがまた皆に幸を与えてくれることでしょう。
神社のすぐ側に広い駐車場があって、参拝者は皆そこに車を停めていました。私はなぜ324段コースに案内されたのかナビの本心は分かりませんが。
帰りに階段を下っていると、青々とした苔の美しさに気づき、趣ある石塔にも気づき、周りの木々がとても綺麗なことにも気づかされました。この景色を見せてくれるために案内してくれたのね、ありがとう、ナビ。
(出口聡子)