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アネモメトリ -風の手帖-

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#106

冬の秋田に留まり、巡る旅
― 秋田県五城目町

秋田で冬ごもりしてみませんか?
昨夏に引き続き、筆者も関わらせていただいている『AKIBI複合芸術プラクティス 旅する地域考』の、合宿形式の現地講座およびワークショップ〈秋田と構想する冬編〉が2月10日(日)より同16日(土)まで開催されます。〈夏編〉では計14名の受講生が、地域の芸術資源にアクセスする集団の旅、個々の旅を経て各自の将来の企画を構想しました(1)。最終発表会では、秋田だけでなく東北他県にまたがるスケールの大きい制作プラン、秋田を舞台にした脚本を朗読するというプレゼンテーション、自身の旅の足跡を「鑑賞体験化」する企画など、多彩な成果が披露されました。
秋田を縦横に移動することで着想を刺激する〈夏編〉と対照に、〈冬編〉ではひとつの地点にしばらく留まる“逗留”も旅の在り方と捉え、移動が困難な雪深い環境でこそ生まれうる哲学的思索、その創造性に着目します。ここで言う「旅」の定義は広く、アート作品、イベント、コミュニケーション・システムや地域への提案など、アートと地域、双方の立場から考察されていることが求められます。
1週間の滞在期間中、五城目町を旅の拠点に、前半は地域を巡る現地講座として、国内外ファシリテーターらとともに地域ゲストを訪ね、後半は参加者相互の構想を深める対話型ワークショップを行います(2)。
前半の現地講座では、お寺の住職を務めるミュージシャン(三種町)、マタギの集落に移住して狩猟も担うフォトグラファー(北秋田市根子)など、文化的複業というべき実践者と対話を重ねます。
地方創生も相まって、地方の文化芸術の担い手というと、ともすると専門職の育成が求められる場合が少なくありません。その風潮を柔軟に乗り越える複合的実践に学び、また各自の異なる文化および経験を共有することで、「旅人(アート)」と、それを受けとめる「器(場所と、そこに生きる人々)」という関係の問い直しを促します。
受講生各自の構想に、プログラムの終了後にも実施を目指して継続される具体的なプランがあれば、秋田公立美術大学大学院 複合芸術研究科が積極的にサポートします。最長3年間にわたる雪国の取り組みが、「アートにおける地域とは何か」あるいは「地域におけるアートとは何か」という問いを深めることを期待します(3)。

(小熊隆博)

(1 )〈夏編〉では国内外ゲストとともに県内各地をリサーチ。3月中に全活動を記録したレポートも公開される予定です。

(1 )〈夏編〉では国内外ゲストとともに県内各地をリサーチ。3月中に全活動を記録したレポートも公開される予定です

(2)「冬ごもり」は来るべき春に備える創造的な営みとも言えます。雪の秋田で将来の構想を企てます。

(2)「冬ごもり」は来るべき春に備える創造的な営みとも言えます。雪の秋田で将来の構想を企てます

(3)