私の母校、沖縄県立首里高等学校には、染織を学習する「染織デザイン科」が設けられています。
沖縄戦後、絶滅の危機にあった紅型染(びんがたぞめ)が、有志によって復興されました。染色技術習得の公的教育機関が必要と考えた彼らは、古都・首里にあった首里高校に「びんがたクラブ」を作り後進の育成を行います。「びんがたクラブ」はその後正式に学科に編成され、1973年に染織デザイン科と名称を変え、今日まで続いています。
同科は定員40名で、卒業単位のおよそ1/3が専門科目にあてられています。1年次で染織の基礎を学習した生徒たちは、2年次からは織物、染物のどちらかを専攻し、3年次で卒業制作をおこないます。
彼ら、彼女らの学習成果の発表の場として、毎年1月後半から2月頭にかけて「そめおり展」が行われています。今回は、1月30日から2月4日まで那覇市内で行われた「第58回 そめおり展」に行って来ました。
私はこの展覧会を毎年楽しみにしています。市販品には使われないモチーフや大胆な色合いの作品にいつも驚かされます。今年の作品にも、口紅とマニキュア、リンゴとさくらんぼが配された紅型染や、トーンの異なる青や緑の柄が左右非対称に配された織りの作品など、新鮮な感性の作品が多くあり、楽しく拝見しました。
作品に添えられたキャプションには、制作の苦労や、家族、恋人への想い、級友や先生方への感謝の言葉など、自分の気持ちがとても素直につづられています。
会場奥に卒業生全員で3カ月かけて制作した壁画《進取果敢(しんしゅかかん)》が掛けられていました。新たな世界へ邁進する決意を表した卒業壁画です。壁画はこの後、卒業式の舞台に飾られます。
沖縄の染織業界は多くの産業人口を抱えることはできません。染織デザイン科の卒業生の多くは3年間学習した伝統工芸とは関係のない進路へ進みます。しかし、自らの作品を熱く語る様子から、ここでの3年間が実り多いものであったことが伝わってきます。
3月1日、自らが製作した卒業壁画に見送られながら、彼ら、彼女らは卒業してゆきます。
(儀間真勝)