2018年、ここ国東半島は六郷満山開山1300年の大きな節目を迎えます。
「この景色はすごい」
山と巨岩とで囲まれた絶景に思わず言葉を失ってしまう場所。この場所にはきっと神様が宿っているのではないかと思ってしまいます。この半島の中央に位置する両子寺(ふたごじ)にはいまも神仏習合の形が濃く残されていて、静寂な空間の中に佇む力強い仁王像が“よく来たね”と睨みながら出迎えてくれます。
「七島藺(しちとうい)」は、国内ではここ国東半島のみでしか生産されていない貴重な畳表の材料です。七島藺の視察、見学、体験が出来る七島藺學舎の中は七島藺の香りがスーっと漂っていました。學舎では、工芸作家の岩切千佳さんの指導のもと、その歴史や伝統の話も聞くことができ、七島藺にも触れることが出来ます。
七島藺を少しずつ水で湿らしながら丁寧に三つ編みにしていきます。岩切さんは簡単そうにしていたのに、自分ではなかなかそうはいかないもので。言葉を忘れて無心になる時間、気が付くと180cm程編みあがりました。それをくるくるとまるめると、なんとも素敵なコースターが出来上がりました。
江戸時代に琉球からやってきた七島藺。昭和の中ごろまでは盛んだったものの、10年前の時点で、農家は5軒まで減ってしまったそうです。七島藺に想いを込める方たちの力により今では10軒まで増え、350年の歴史を皆で繋ごうとしています。岩切さんもまた、生産者の方々の努力と同じくらい、畳表にならなかった七島藺が無駄にならないよう、編んで編んで編んで、少しでも多くの作品を作って、日本だけでなく世界にまでも届けてくれています。
七島藺は多くの畳に使われている藺草よりも丈夫で、使えば使うほど艶のでる優れもの。1964年に開催された東京オリンピックの柔道会場の畳はこの七島藺が使われていたそうです。2020年の東京オリンピックでも使って欲しいものの、今の柔道畳は安価のビニール畳に統一されているようです。どうにかこうにか何らかの形でオリンピックでも活躍してくれたらいいのになぁ、と祈るばかりです。
(出口聡子)