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アネモメトリ -風の手帖-

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#25

加茂神社のダイナミックな煙火奉納
― 長野県長野市

長野市西長野にある加茂神社は、善光寺との関わりが深い7社のうちのひとつとして、広く市民に親しまれています。初代の善光寺大本願上人が信濃国に下向する際に、京都の下鴨神社から祭神をお迎えしたのが起源、などの言い伝えがあります。その加茂神社では、毎年9月16日17日に例祭があるのですが、その初日夜に、毎年とてもはげしく楽しい催しが行われています。
長野では花火のことを煙火(えんか)と表現することが多く、祭事や神事、イベントなどでの煙火奉納も盛んです。この加茂神社の例祭でも各種の煙火が奉納されるのですが、お祝いとしてきれいな花火が数発あがる程度にはとどまりません。
16日夜、カランカランというベルの打ち鳴らしとともに「加茂」と書かれ長い棒に乗ったちょうちんが先導し、氏子たちが担ぐおみこしに乗った白色の煙火の玉が波打ちながらわっしょいと入ってきます。前後して境内では煙火の火薬が連続で炸裂し、張り巡らされたナイアガラの火の粉が流れ出し、爆竹が飛び散ります。
長野市内でただ一つ残るといわれる貴重な茅葺屋根の本殿があることにもまったくかまわず、人が密集している狭い境内で、高い木のてっぺんからも火花のシャワーが降り注ぎます。クライマックスにはバラバラバラ! という爆音とともに「加茂煙火」の火文字が浮かび上がります。氏子や近所のみなさんはこのアナーキーな状態に慣れているようで、おだやかに雑談などしながら楽しんでいて、特に動じません。自分一人だけが「熱い!あぶない!」、「屋根が燃える!」と叫びながら笑ってしまいました。
一転して翌17日の朝には、善光寺大本願上人が、加茂神社を静かに参詣されます。これだけの大きなお寺の住職が、街のひとつの神社を訪れ詣でるというのは少し不思議な感じもしますここに、善光寺と加茂神社の長く深いつながりや、神仏分離などの政治的動きとは距離を置く、宗派も男女も関係無く受け入れてきた善光寺ならではの懐の深さを感じることができます。神社入り口脇の石碑には、図版写真のように「加茂神社」、「大本願」と一緒に刻印されているのも印象的です。

(山貝征典)

境内に入ってくるおみこしにのった煙火の玉。

境内に入ってくるおみこしにのった煙火の玉。

狭い境内で火花が飛び散っています。

狭い境内で火花が飛び散っています。

入り口の石碑の「加茂神社」「大本願」の文字。

入り口の石碑の「加茂神社」、「大本願」の文字。