1970年頃の大阪は高度経済成長期と大阪万博も重なり、とても賑わっていました。街の至る所にショッピングセンターが作られ、雑貨屋や本屋、玩具店、衣料品店等々の商店が出店し、活気に溢れていましたが、半世紀が過ぎ、多くのショッピングセンターは閑散としています。

団地の1階にショッピングセンターが入っており、写真左端の位置に博文堂書店があります
しかし、大阪府箕面(みのお)市粟生(あお)ショッピングセンターの「博文堂書店」は元気に営業をしています。カフェ併設等ではなく、本だけで商いが成り立っている昭和から続く本屋さんです。博文堂書店のレジには予約の本を受け取りにきたお客さんが多く訪れています。レジではサービスカードにスタンプを押してもらい「ありがとうございました、またお願いします」「今日は良い天気ですね」といった会話が聞かれます。
50年前から店を守る、「博文堂書店」創業者の野口夫妻に話を伺いました。
「1975年3月、ちょうど50年前に、近隣の団地とショッピングセンターも含め、大雪の降る中、『粟生団地町開き』が行われると同時に博文堂書店は創業しました。結婚した直後にサラリーマンの主人が『本屋をやろう』と言い始めて、私もワクワクしてお店を始めました。町開きの式典にはチンドン屋も来て大盛況でした。おかげさまで、今年(2025年)で創業50周年を迎えました」等々のお話を聞かせていただきました。野口夫妻がワクワクして開業した本屋さんからは、今も宝島に来たような高揚感を感じます。現在は、息子さんが店を継いでいます。

2代目、博文堂の野口店長。お気に入りの絵本を手に、本の魅力を語っていただきました。
「文化を守り、文化を発信する地域の本屋でありたい」
本が大好きな2代目店長の息子さんは「地域の文化と町を支える役割があるので頑張っています」「これまでの本屋は売るだけでしたが、今は文化と情報を発信して、心の豊かさを届けることに力を入れています」「うちには文庫本が沢山置いてあります。1,000円までで買えて、何度も読み返して楽しめる、文庫本は素晴らしい媒体です」と本への思いを聞かせていただきました。店舗での販売だけではなく、付き合いのある喫茶店や美容院への雑誌の配達等、地域との繋がりを大切にしながらの営業を心がけておられるそうです。

地域のお客様のニーズを確認して品揃えをされています。レジでの「ありがとうございます」の響きに、ネット通販では味わえない温かい風情を感じ、本への愛着が増します
どこかまだ昭和の雰囲気が香る店舗で、厳選された「本」に触れることは、ネットや図書館では味わえない刺激があります。昭和を知る方、平成生まれの方、本との出会いを求めて「博文堂書店」へ足を運んでみてはいかがでしょうか。
取材協力
博文堂書店
大阪府箕面市粟生間谷西2-6-2-107 粟生ショッピングセンター1F
(中野聡史)