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#262

広く開かれた大会を目指して
― フランス パリ

パリがオリンピックの開催都市となったのは100年ぶり、3回目となります(註1)。今大会のスローガンは「Games wide open(広く開かれた大会)」。
記事執筆時点では開幕式直前で、この記事が公開されている頃には閉幕しているでしょう。開催中のレポートは他にお任せするとして、今回は3つの視点から、パリオリンピックがどのように「開かれた大会」を目指していたのかを開幕前の現地の空気と共にレポートします。

パリ市庁舎前

パリ市庁舎前

セーヌ川沿いに設営された開幕セレモニーの観覧席

セーヌ川沿いに設営された開幕セレモニーの観覧席

まず、空間の広がりを感じる会場づくりです。開幕セレモニーはスタジアム屋内で行われるのが通例でしたが、今回は史上初となる水上パレードで選手たちが船に乗って登場します。また、競技会場にはエッフェル塔やコンコルド広場など歴史的モニュメントを活かした屋外会場が設営され、青空のもと観客の声援が周辺にも伝わってくる開放感あふれたデザインが特徴です。

ブレイキンなど都市型スポーツ競技の会場となるコンコルド広場

ブレイキンなど都市型スポーツ競技の会場となるコンコルド広場

2点目は分野横断的な広がりです。大会期間中は試合を観戦するだけではなく、アート鑑賞を通じてオリンピックを楽しめるイベントが多くの美術館や博物館で企画されます。例えば、ガリエラ美術館では服飾とスポーツの歴史に関する特別展「LA MODE EN MOUVEMENT #2(運動におけるモード #2)」を開催(註2)。芸術の都パリならではの角度からスポーツへの理解を深めることができます。

1900年代に着用されたテニスのユニフォーム(ガリエラ美術館)

1900年代に着用されたテニスのユニフォーム(ガリエラ美術館)

3点目は大会が市民に広く開かれている点です。パリには25ヵ所もの市営ファンゾーンが設けられ、誰でも大型スクリーンで試合の生中継を観戦することができます。観戦チケットは高い競争率で高額になる試合も少なくありませんでしたが、経済状況に関係なく多くの一般市民にオリンピックを楽しんでもらおうという行政の意識が感じられます。

大会期間中は街の至るところが競技会場になっているため、居住区であっても警察による厳しい規制が行われるなど生活に不便を感じることもあります。しかし、それらを含めてパリ市民一人ひとりが何らかの形で大会運営に関わっているという意識があり、スポーツの祭典を日常のなかで身近に感じられる特別な期間になっている気がします。
次回のオリンピックはロサンゼルスへと引き継がれます。

2015年に起きた同時多発テロ事件の現場となったパリ11区を走る聖火ランナー

2015年に起きた同時多発テロ事件の現場となったパリ11区を走る聖火ランナー

(註1)
1回目のパリオリンピックは1900年。2回目は1924年に開催された。

(註2)
Palais Galliera, “LA MODE EN MOUVEMENT #2,” Retrieved  July 21, 2024,
https://www.palaisgalliera.paris.fr/fr/expositions/la-mode-en-mouvement-2

参考
ATOUNT FRANCE(フランス観光開発機構)「パリ2024は広く開かれた大会に」、
https://jp.media.france.fr/ja/content/paris2024-CP(2024年7月21日閲覧)

(佐藤美波)