山口県の日本海側、長門にある元乃隅(もとのすみ)神社は、下関市職員の方に紹介してもらった絶景スポットです。市街地からカーナビゲーションの指示に従って、なだらかな山道をくねくねと縫って行くと、海に向かって123基の鳥居が並んでいます。海と空の青色、雲の白色を背景に、等間隔で行儀よく並んだ鳥居の赤色が目にも鮮やかです。訪れたのは年の瀬も迫った時期でしたが、国内外から多くの参拝者が訪れており、駐車場は車でいっぱいでした。
この神社は1955(昭和30)年に建立されており、鳥居は1987(昭和62)年から10年かけて奉納されたものです。1基ごとに奉納者の名前、居住地、奉納日が記載されており、多くは山口県内の個人・法人から奉納されたものです。調べてみると、鳥居を奉納するという習慣は、江戸時代から広まったとされており、神様にお願い事をする時や、お願い事が叶った時に行われるものだそうです。奉納者の願いや感謝の気持ちが託された鳥居をくぐり抜けて海に向かうと、世の中の秩序から広い世界に向かって解放されていくような、日常から非日常への開放感を覚えました。
そして、この神社のもう一つの見どころは、6メートル近くある大鳥居の上部に賽銭箱が備えてあることです。賽銭箱には赤いハートの目印がついており、その左右には白い狐が2匹ずつ向かい合っています。大鳥居の周りを参拝客が取り囲み、賽銭箱を見上げたり、お賽銭を投げ入れたり、落ちたお賽銭を拾って渡しあったりする様子は、他の神社では見られない光景です。
私たち家族も揃って小銭を握りしめ、大鳥居を見上げて距離を測り、各々投げ入れました。繰り返すこと数回、最初に小学生の息子が投入に成功しました。お賽銭が入ったことに歓喜して、手を合わせるどころではありません。20分ほどかけて、なんとか家族全員、お賽銭を投げ入れることができました。「誰々が先に入れたよね」「何回目で入ったよね」という思い出話も、よいお土産になりました。
(海老原仁美)