今夏、福岡市中央区六本松にオープンする予定の「Art House 88」（仮称／プレオープン中）をご紹介します。福岡市美術館からは600メートル程の場所にあり、徒歩８分程度で行くことができます。この場を運営するのは、福岡市に住むインディペンデントキュレーターの宮本初音さんです。

Art House 88（仮称）のエントランス

宮本さんは、1990年代、福岡市内の商業施設や公共空間を舞台に作品を設置する「ミュージアム・シティ・プロジェクト」の企画に関わりました。企業、行政、美術関係者の三者で運営されたこのプロジェクトは、都市型アートプロジェクトの先駆的事例の一つです。
その後、福岡市文化芸術振興財団が運営するギャラリーのディレクターや2011年の博多駅全面リニューアルの際のアートイベントの企画、福岡市内に壁画を展示するプロジェクトの事務局、2019年からは有志のインディペンデントキュレーターらとコレクティブ的な活動（秋の種）を始めるなど、福岡を中心に九州で活動するアーティストを様々な形で紹介されています。
2010年からは、WATAGATA Arts Network（福岡釜山アートネットワーク）という、福岡と釜山を拠点に展開する活動も行なっています。活動名の由来である韓国語の「ワッタガッタ」は、「行ったり来たり」という意味です。福岡、あるいは九州と釜山のアート関係者が、それぞれの拠点を行き来し、情報交換しながら交流を深め、展覧会やパフォーマンス、レジデンスやシンポジウムなどを行ってきました。朝鮮半島やアジア大陸に近く「アジアの玄関口」である福岡ならではの特徴的な活動です。

宮本さんがこれまで手がけたアートマップ

また、定期的に福岡や九州を中心としたアートマップの作成をされています。20年ほど前、私が関西に住んでいた頃、福岡市のアート関連の情報を得るのは今ほど簡単ではありませんでした。当時、福岡市に行った際、たまたま入手できた宮本さんの作成した福岡市アートマップ（手書きだったと記憶しています）を頼りに、市内のアートスポットを回ったことがあります。スマートフォンやSNSが普及しておらず、チラシや紙媒体の情報誌を頼りにしていた当時の貴重なインフォメーションでした。
プレオープンした「Art House 88」（仮称）は宮本さんにとって、３番目の拠点となります。最初の事務所は福岡市博多区の「アート・アパート88」、２番目の事務所は福岡市中央区の「ART BASE 88」、そして３番目がこの場所です。住宅街にある平屋をアートハウスにして、展覧会やレジテンス、トークイベントなどを行う計画があるそうです。

Art House 88（仮称）の内観１（牛島智子展の様子）

Art House 88（仮称）の内観２（牛島智子展の様子）

宮本さんは地元のアート関連の情報を収集・発信し、福岡を中心に九州や釜山を拠点にする多くのアーティストと関わりながら、多種多様な展覧会やプロジェクトを継続的に実践されています。2021年度に京都芸術大学通信教育課程の科目等履修生として学芸員課程で学んでおられ、学習したことを同スペースの運営に活かしたいと考えているそうです。
個人が運営するこのような場所や活動は大変重要だと感じています。福岡に行かれた際は、ウェブサイトをチェックして、是非、足をのばしてみてはいかがでしょう。

「Art House 88」(仮称)
https://artbase88.wordpress.com
https://www.facebook.com/ARTBASE88
https://www.instagram.com/artbase88_fukuoka/

（牛島光太郎）