アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#18
2014.06

場の音、音の場

前編 梅田哲也×細馬宏通 対談 展覧会「O才」をめぐって
6)遊びを進化させ、作品を成立させる

フィールドパフォーマンス的な展覧会には、ゲストの面々が参加していた。素の行動なのか、パフォーマンスなのかわからないような動きをしたり、ガイドをしていたりと、それぞれが淡々と、どこかで何かをしている。

(ゲスト)
捩子(ねじ)ぴじん、松井美耶子、渡邉寿岳、會田(あいだ)洋平、アキビンオオケストラ、ハイネ・アヴダル & 篠崎由紀子 & 美夢、中尾微々、加藤デビッドホプキンズ、本郷祐輔、ほか。

細馬 會田くん(*1)がゲストというので、どこかでライブでもするのかと思ったんだけど。そういうことが起こる気配はまったくなくて。僕が(会場のゴルフ練習場に)行ったときは、會田くんはにこやかにいて。

梅田 子どもがいました?

細馬 子どもはいた。しかも會田くんと遊んでるふうだったんだよね。だから僕も遊びに混ぜてもらっていたら、いつのまにか、(黒い大きな気球を)持ってください、背負ってくださいとか言われて。変なこというやつだな、しかも慣れ慣れしいなこいつ、って。子どものくせに、子どもばなれしたやつで。でもそういうのも子どもだからなのかなって思って、結局素直に従って気球を背負ったのね。そしたら、いきなり背中に衝撃が来た。最初、地震か何かかなと思ってよろめいて、振り向いたら向かいの2階の空き部屋で會田くんがこちらを見て笑ってて、そこからこちらに向かってロープが張られていて、そばには大きな別の気球が落ちていた。それで、あ、會田くんのいるあそこからでかい気球がすうっとロープを伝ってやってきて、背中の気球にぶつかったのかって、ドミノが倒れるみたいにばたばたっとわかったのね。あの、目の前の痕跡から自分の体験が一気に構成されなおされちゃう感じはすごかったな。ああやって大きな球に、すぐそばの家の2階から別の球を投げてぶつけるというのは梅田くんが考えたの?

梅田 そうですね。別の展示の現場に、會田くんが捩子くん(*2)や渡邉くん(*3)と一緒に訪ねて来たことがあって、そのとき、あの風船で遊んでたんですよ。高いところからぶらんぶらんさせて、巨大だから、浅間山荘事件のときの鉄球みたいなことになって、そこにひとが走って突っ込んでいって、ぶつかって倒れるみたいなことをやったりしていて。

細馬 ああ、浅間山荘か。

梅田 そのときに捩子くんが風船を担いで運ぼうとしたら、バランスが上手くとれなくて、意外とむずかしいと。そしたら會田くんが、「ぜひ僕にやらせてください、できるような気がします」と言いだして。で、これをやってみたら、実際になかなか上手で、でもその立ち姿がやたらおかしくて。それで今回、ゴルフ練習場だから、ちょっと動きのあることをやりたいな、と思っていたし、ここで風船持とうか、みたいな。

細馬 ええ話やね。風船のことも、今経緯を聞くまでは、何であんなことを思いついたのかが全然わからなかったんだよね。あの遊びが成立する進化の過程というのがね。

梅田 あの男の子が持っているのを見ました?

細馬 うん。大黒様の小さな置物みたいな感じだったな。あの子がちっちゃいからさ。それがものすごい大きな袋を持って、歩いてる。しかもあの袋って、人間が持てるような大きさじゃないですよね。

梅田 ないんですよね〜。

細馬 とても大きな球を小さな子どもが持っているという、あのバランスがまたね、この世ばなれしてたね。彼に持たせるって誰が考えたの?

梅田 自分で持ったのかな。祐輔くんっていうんですけど、持った瞬間にもう100点だと思って。金太郎飴みたいだなって僕は思ったんですよね。

細馬 金太郎飴ってどういうこと?

梅田 なんか分からないんですけど、切っても切っても顔だという感じに見えたんです。あの立ち姿が。

ゴルフ練習場で、巨大な黒い風船を背負って歩く

*1會田洋平 core of bells、ダブルマーメイド、遠藤一郎GROUP(仮)のメンバー。sei and musicをプロデュース。音楽活動のほか、飲み歩き活動や草野球活動などを積極的に行っている。

*2捩子ぴじん 振付家/ダンサー。2004年まで大駱駝艦に所属し、舞踏家・麿赤兒に師事。退団後、自身の体に微視的なアプローチをするソロや、体を物質的に扱った振付作品を発表する。

*3渡邉寿岳 フリーランスの動画カメラマン。「O才」の動画を撮影した。