アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#14
2014.02

ひらかれた、豊かな<場>をつくるために

前編 京都・Social Kitchen
1)21世紀の公民館 Social Kitchen
エントランスはガラス張りになっている

エントランスはガラス張りになっている

京都市上京区、同志社大学キャンパスのほど近くにある閑静な住宅街。2010年8月、その一角に「Social Kitchen」(以降S・K)はオープンした。
キャッチフレーズは「21世紀の公民館」。地域社会において、多くのひとが自由に表現、発言できる場を提供したいと、「hanare」というグループのメンバーが始めたのだった。
もとは帯屋さんだったという3階建ての建物を、1階はカフェ、2階はワークショップやイベント、勉強会、パーティーなどの多目的スペース、そして3階はシェアオフィスとして使っている。元工場といっても、こぢんまりとしており、大きめの一軒家というところだろうか。hanareのメンバーが仲間とともに改装した空間は、手づくりの温かさがそこここに漂う。庭には桜の木が茂り、窓ガラスや床などの古びた感じも相まって、気持ちの和む心地よい場所だ。
公民館と名乗るだけあって、ここにはあらゆる人々がやってくる。カフェの客、ワークショップの主宰者に参加者、イベントの出演者に観客、学校帰りの近所の小学生、町内会の人々、海外からの旅行者……。国内外の子どもからお年寄りまで、またそれぞれのバックグラウンドや職業もさまざまだ。
スタートしてもう3年半になるが、S・Kのかたちは今なお定まらない。「公民館」を、しかも自分たちが生きる「21世紀」の、という“理想”を実現しようと、試行錯誤を重ねているのだ。

1階のカフェスペース

1階のカフェスペース

S・Kのサイトには、以下の文章が記されている。

生活に関わることすべて(食、芸術、現代思想、身体、政治/経済、建築、他全部)について実験的で ワクワクする活動を行っている人達と協働しながら、新しい考え方、表現方法を模索、実践することと、 あくまでも京都に生きる私たちの生活に深く根ざしながら、世界の地方都市ともダイレクトに繋がり、 インディペンデントな場所、抗う力を養う場所づくりを続けています。

読んでいるほうもわくわくしてくるような発想だ。市民であるわたしたちが日々生活するなかで、自由に発言し行動し、そしておかしいと思ったことに異議を唱え、自分の考えを表現する。それを可能にする場を謳っているのだから。そんな日常はとてもクリエイティブですこやかだ。実際、数多くの賛同と共感が寄せられていて、海外でも高く評価されている。けれども、今の日本で、S・Kのような「場」があり続けることは、いろんな意味でとても難しい。
そもそも、なぜhanareのメンバーはS・Kを立ち上げようと思ったのだろうか。彼らのこれまでの活動について聞いてみた。