1)商業施設の器を生かした図書館
楕円形をした都城盆地の「へそ」に位置する場所に、かつて地元の百貨店、都城大丸が運営するショッピングモールがあった。商業の中心として賑わったモールも、日本各所の地方都市と同様、郊外化がすすむにつれ中心地が空洞化、衰退していく。娯楽施設も兼ね備えた郊外型のさらに巨大なモールやオンラインショップに買い物客が移行したのだ。そこで中心市街地活性化のため、もともと市役所横にあった市立図書館をモール跡地に移設することになったのだという。
消費そのものは郊外の大型店やネットショッピングで事足りる。しかし、それだけでは満たされない何かがある。その空洞を埋めるように2018年の4月に新生都城市立図書館はオープンした。
大規模な建て替えは行わず、モールの構造はそのままに、内装だけが図書館へとリデザインされた。公共施設には珍しい黒を貴重としているのは、都城市が黒地に金の家紋を持つ島津藩発祥の地であることにちなんでいるという。2階まで吹き抜けになった高い天井からは光が差し、かつて買い物客が利用したであろう施設中央部の階段を明るく照らしている。商業施設の器に合わせて生まれた図書館であることは、この施設のアイデンティティであり、内容にも大きく影響を与えている。階段周辺の広場を中心都市、街路の脇に立ち並ぶ書棚の前には木箱が並び、ショーケースの中で書籍が新入荷品のように展示される様は商店の軒先のようだ。
遡ること2年前、指定管理者の募集に応えたのが株式会社マナビノタネ代表の森田秀之さん。1990年代なかばより博物館や図書館などをつくる仕事に携わり、せんだいメディアテークをはじめ、武蔵野プレイスなど、先進的な試みで注目を集める図書館開館のお手伝いをしてこられた。
今回、指定管理者である森田秀之さんと館長を務める井上康志さん、おふたりのお話をじっくり伺った。