ここ数年、図書館のあり方が変わりつつある。民間への部分的な業務委託や、地域との密接な関わり、積極的な展示やイベント開催など、新しいあり方の図書館やこれまでにないサービスの登場には、同時に読書人口の減少や、市井の人々による情報収集法の変化が密接に関わっている。
本を巡る状況に関しては、出版不況や読書離れ、グローバルオンラインショップの台頭に書店数の減少と、ここ20年近くネガティブな言説ばかりが囁かれ続けている。一方で、複合型や従来の流通を介さない「新しいスタイル」の本屋が注目され、雑誌では本屋特集が頻繁に組まれ、注目を集めていることも確かだ。
私自身19坪の個人書店「誠光社」を経営し、日々店頭に立ちながら、書籍を売り、それにまつわるイベントなどに集まるお客さんたちと対話することで、書店というビジネスで生計を立て、状況をつぶさに観察し続けている。
現場にいながら実感するのは、本が売れず、書店がただ減少しているというシンプルな問題ではなく、本を取り巻く状況が複雑化しながら大きく変化しているということ。どの本が売れず、どのような書店が必要とされなくなっているのか。その腑分けがきちんとなされていないがために、混沌とした言説が多くの読書人たちを闇雲に不安にさせている。
たとえば、書店が扱う商品としての書籍と、図書館が扱う情報インフラとしての本は、同じ書物でありながらまったく異なる存在だ。地方の図書館と、商業ビル内の複合型書店では空間が持つ価値や意味合いは別物だろう。
この特集では、群馬の「太田市美術館・図書館」、宮崎の「都城市立図書館」、青森の「八戸ブックセンター」と、3回にわたり新しいスタイルで注目を集める図書館へと足を運び、「売り物ではない本」と「本のある空間」を見学し、考察することで、いま読者には何が必要とされ、何が不要となりつつあるのかを明らかにしたいと思う。