アートとともにひと、もの、風土の新しいかたちをさぐる

アネモメトリ -風の手帖-

特集 地域や風土のすがたを見直す、芸術の最前線

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#7
2013.07

市と、ひとと、まちと。

後編 各地に広がる、市の新しいありよう
2)高知発、全国初のオーガニックマーケット1
草分けのビジョン

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(上から)のどかであたたかな空気に包まれた会場 /

(上から)のどかであたたかな空気に包まれた会場 / スタッフ用のエプロン / 弘瀬豊秀さん。純子さん手づくりの食品や新鮮な食材を並べる / 楽しいライヴやイベントなども開催

高知市には日曜市だけでなく、火曜市、水曜市、木曜市、金曜市、そして土曜市と連日市が立つ。いずれも地元の人々向けのローカルなものだが、なかでも土曜市は個性が際立っている。2008年に始まったばかりの、日本で初めてのオーガニックマーケットなのである。

市内から車で20分ほどの、山に囲まれたのどかな場所。土地の空気に溶け込むように、自然農法でつくられた野菜を始め、加工食品、雑貨など、安全や安心にこだわった店が並んでいる。
「高知オーガニックマーケット」を始めたのは弘瀬純子さん。福岡出身だが、夫・豊秀さんの高知の実家にUターンして農業を継ぎ、じきに日曜市にも出店するようになった。出店テントに小さく、農薬を使っていないことを書いていたら、若い世代を始め、“無農薬”に興味を持つ人々が集うようになっていった。“オーガニック”ということばを若者から聞き、弘瀬さんはそれだ! と思ったそうだ。「日曜市に出ていて、みなさんに出会えたから、オーガニックなものだけを集めた市をやってみたいと思うようになりました。日曜市があったらこそ、土曜市が始められたのです」。市のまち・高知で、日曜市をきっかけに、新たな展開が始まった。

始めるにあたって、弘瀬さんたちはしっかりとビジョンを持っていた。
生産者が、新鮮で安全な食材を直接販売する場をつくりたい。日々の生活や社会を考える「有機の文化」を発信していく場にしたい。ウィークエンドの土曜日に、良質な食材を消費者に提供したい。そして、定年帰農、Iターン、Uターンで就農しようとする方々を応援したい。
単なるイベントではなく、「生活市」として高知に根づき、市民に末永く愛されるためにどうすべきかを考え、実行に移していった。市にふさわしい場を探し、有機栽培の農家など、出店者を知り合いから辿っていく。運営方法を考える……。やるべきこと、クリアすることは山積みだった。立ち上げたとしても、続けていくのはもっと大変だ。心配した夫の豊秀さんが「やめとけ」と何度言っても、弘瀬さんの意思はゆるがなかった。

2年の下準備を経て「高知オーガニックマーケット」は始まった。最初は高知県の港湾用地を借りての開催だったが、土地の継続的使用が難しかったため、2年後に山あいの県立池公園に移り、今に至っている。市内からは多少遠いけれど、山に囲まれ、川が流れるこの場所は、心あるアットホームな市にふさわしい。

みずみずしく新鮮な野菜や果物、天然酵母のパンにクッキー。彩りのきれいな玄米弁当に、ピザ、たこ焼き(!)……。魅力的な食べ物だけでなく、手づくりの石けん、天然石を使ったアクセサリーや、手づくりの木のおもちゃ、天然染料で染めたTシャツや柿渋染めのバッグまで、色とりどりの出店が約70軒。始めた当初は35軒ほどだったというから、5年のうちにずいぶん大きくなった。出店者の知り合いだったり、客として来ていて、出店し始めることになったりと、人々が集うなかで市も成長してきたのである。

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(上から)鮮度が命の淡竹 / 弘瀬さんの“梅漬”(干してない梅干)と桜の花漬 / モグラが通ってこんなかたちに  / 柿渋染のバッグや布もの / 可愛らしいヴェジおやき / この時期だけ出回る野いちご / 彩りもきれいな滋味あふれるお弁当 / ハーブは珍しい種類も揃う / たこやきももちろんオーガニック

(上から)鮮度が命の淡竹 / 弘瀬さんの“梅漬”(干してない梅干)と桜の花漬 / モグラが通ってこんなかたちに / 柿渋染のバッグや布もの / 可愛らしいヴェジおやき / この時期だけ出回る野いちご / 彩りもきれいな滋味あふれるお弁当 / ハーブは珍しい種類も揃う / たこやきももちろんオーガニック